跡部くんが企画した合同合宿に参加することになった。 島一つ丸ごとテニス用合宿施設だというのも驚いたが、更にその合宿所専用のプライベートビーチまであるとか、どんだけだ跡部くん。 お金持ちの世界のことはよくわからないが、それでも彼がかなり突き抜けた存在だということだけはわかる。 「七海、こっちにおいで」 「多少は日除けになるだろう」 「ありがとう」 跡部くんが手配してくれたバスの到着を待つ間、炎天下の下でただ立っているのはさすがにつらい。 幸村くん達の好意にありがたく従って、長身の彼らが作る影に避難させてもらった。 「随分大荷物だな」 「着替えとか私の荷物はこっちのバッグだけ。この大きいのはみんな用」 「俺達の?」 「うん。グリップテープやタオルの予備とか、冷却シートとか救急セットを入れてあるの。向こうでも準備してくれてると思うけど、こっちで用意出来る物はなるべく持って行こうと思って」 「なるほど。さすがだね」 「たるんどらんな。それでこそ王者立海のマネージャーだ」 「ふふ、よく言うよ。ちゃんと務まるか不安そうにしてたくせにね」 「そ、それは最初の内だけだ!七瀬は小柄で華奢だから、激務に耐えられるのかと…」 「七瀬があまりに清楚で可憐な少女だから心配だったそうだ」 「七海、気をつけるんだよ。真田みたいなタイプが一番危ないからね」 「なっ、何をっ…!?」 「落ち着いて、真田くん。二人ともからかってるだけだから」 「む……」 不機嫌そうに口を閉じてしまった真田くんに、幸村くんは遠慮なく笑っているし、柳くんも口元が緩んでいる。 本当仲良しだなあ、この三人。 男の子同士の友情を感じて羨ましく思っていると、丸井くんと桑原くんが走って来るのが見えた。 その後ろから赤也くんも走ってきている。 「遅い!たるんどる!!」 途端に真田くんが雷が落とす。 「そんなこと言ったって、まだ時間前だろ…」 「立海生たるもの、時間前行動は基本中の基本ですよ」 柳生くんまで容赦がない。 何か言うと自分に矛先が向かうのがわかっているので、仁王くんは黙って傍観の構えだ。 「赤也くん、遅刻しなかったね。偉いね」 「七海先輩がモーニングコールしてくれたお陰ッス!」 「赤也だけずるいな。俺も七海にモーニングコールしてほしかったよ」 「幸村くんのほうが早起きなのに?」 「朝一番に七海の声を聞けるだけで気合いの入り方が違うからね」 そういうものだろうか。 にこにこする幸村くんを見ていると、だんだんそんなような気がしてくるから不思議だ。 「あ、バス来たよ!」 「七海、俺の隣に座ってくれるかい?」 「うん、私でよければ喜んで」 「幸村くん、朝からフルスロットルだな…」 「しっ、聞こえるぞ!」 こうして私達はバスに乗り込み、跡部くんの待つ合宿所へと向かったのだった。 |