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休憩時間中は自由に泳いでいいという事で、プールで軽く泳いでいたら、突然グイッと力強く腕を引かれた。
そのまま水中に引きずり込まれる。

何かと思えば、すぐ目の前に不二くんの顔があった。
水中なので勿論音は聞こえなかったけれど、クスッという笑い声が付きそうな笑顔がすぐそこにある。

近い!近い!近い!近い!

笑みを浮かべた整った顔が、揺らぐ栗色の髪が、まるで水の抵抗なんてないみたいに滑るように近づいてくる。

殆ど唇が触れんばかりの距離に迫った、綺麗な顔。
不二くんの鼻が自分の鼻に当たるんじゃないかと思った瞬間、二人の顔の間に上からザバッと大きな手の平が割って入った。
それはそのまま私の口を塞ぐようにして口元を覆い、お腹に巻き付いたもう一つの腕によって一気に水上へと引っ張り上げられる。

「ダメだよ、不二」

口から手の平が離れて大きく息を吸い直す私の耳に、甘い透明な声が届いた。
さっきまで私の口を覆っていた手は、今は私の頬から顎にかけてを包み込むように触れている。

「これは俺のだって言っただろう」

「そう?」

続いて水中から現れた不二くんが、濡れた髪を掻き上げて笑う。

「まだ誰のものでもないと思ってたけど」

「悪いね。売約済みだ」

「それって、ただ買うつもりになってるだけじゃない。それならボクが持っていっても文句は言えないよ」

「そんなことを俺が許すと思うかい?」

ふふ、と笑みを含んだ甘い吐息が耳にかかる。
逃げようにも幸村くんに掴まれているせいで動けない。

「不二とは趣味が似てるとは思っていたけど……まさか好みまで同じだったとはね」

「そうだね」

苦笑する幸村くんに、不二くんもクスッと笑ってみせた。

「どうする?こればっかりはお互いに譲り合うわけにはいかないよね」

「当然。俺は諦めるつもりはないよ。不二は諦めてくれるのかい?」

「まさか。ボクも諦めるつもりはないよ」

「は……はじめちゃーん!はじめちゃーん!!」

思わず助けを呼ぶと、凄い勢いではじめちゃんが飛んで来てくれた。

「何をやってるんですか、こんな時に!」

そして何故か私までお説教されてしまったのだった。


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