無情にも真奈の目の前で乗降用のドアがぴしゃりと閉められる。
これでもう逃げられない。

ヘリのメインキャビンの中には、飛行機のファーストクラスのものかと思うような座席が幾つかあり、それとは別に後部の壁際にカンバス地の細長いシートが並んでいた。

ザンザスは座席の一つに真奈を降ろすと、自分もその隣に腰を降ろした。
座席自体はかなり大きいはずなのだが、彼が座ると窮屈そうに見える。

「ベルトを締めろ」

「う、うん」

真奈は座席のサイドにあるベルトを引っ張り、あたふたと装着した。

それを確認したザンザスは、自身はベルトを閉めずに長い脚を投げ出すようにして悠々とした姿勢のまま、操縦席に向かって「出せ」と命じた。

振動が大きくなり、ヘリコプターが離陸する。

(どこに連れて行かれるんだろう……)

隣に視線を向ければ、ザンザスは座席の肘掛けに頬杖をついて瞑目していた。
その表情からは悪意は感じられない。

徐々に遠ざかっていく校舎を窓から眺めながら、真奈は腹をくくった。
大丈夫、何とかなるはずだ。
──たぶん。



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