昼休みも終わりに近付き、教室に戻る途中の生徒やトイレに行く生徒でそろそろ慌ただしくなりはじめた頃。
真奈は教室に向かって廊下を歩いていた。

今日は演劇部の友人に誘われて彼女達の部室で昼食をとっていたので、鞄持参で行ってきた帰りなのだ。


ざわっ。


突然、背後が騒然となり、雰囲気が変化する。
一体何事かと振り向いた真奈は、視界に映った人物を見て目を丸くした。

「ザンザス!?」

ヴァリアーの隊服である黒いジャケットを肩に羽織った逞しい体躯の大男が、零地点突破を使わずして周囲の人間を凍らせながら真っ直ぐこちらに向かってズンズン歩いてくる。
間違いなくザンザスだ。幻術による幻覚ではない。
教室から一歩足を踏み出しかけた状態のまま今にもチビりそうな顔で固まっている男子を見て、無理もないと真奈は少年に同情した。
何しろデカい。
そして、怖い。
とにかく威圧感が半端じゃないのだ。
そこにいるだけで周囲の者が従わずにいられなくなるような、そんな威圧感がザンザスにはある。

精悍な顔は整っていて男らしい魅力があるのだが、無惨な傷痕があり、目付きも鋭く、どう贔屓目に見てもカタギの人間には見えない。
厚みのある肩や胸板とは逆に、腰は引き絞られている。
アスリートのようにしなやかで、敏捷さと逞しさを兼ね備えているのだと一目で分かる肉体だ。
そんな男が、肩で風をきってブーツの踵をカツカツ言わせながら大股に廊下を歩いているのだから、誰だってビビるだろう。



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