「なんだこの音?」

「ヘリコプター…?」

平和な昼休みに似つかわしくない爆音の発生源は、遠くからやってくるヘリコプターだったようだ。
真っ直ぐにこちらに向かって飛んでくる。

「うわっ!」

「10代目!」

強風にあおられた綱吉が転け、獄寺が慌てて助け起こす。
バランス感覚の良い山本はさっと身を屈めて風をやり過ごすと、いつでも行動に移れるように時雨金時を片手に構えながら油断なくヘリの様子を伺った。

「まさか、10代目の命を狙って!?」

「落ち着けよ獄寺。敵対ファミリーの刺客なら、こんな昼間っから目立つマネはしねーだろ」

しかし綱吉は、昼間から駅前広場で襲撃してきた何処かの暗殺部隊の剣士の件もあるし、マフィアは意外と忍ばないものだという事を学んでいた。

そうする内にヘリは校舎の上空で着陸に適した場所を求めて数回旋回した後、校庭のど真ん中に降り立ったようだ。
爆音に驚いた生徒達が窓から身を乗り出して覗いている。

珍しい漆黒の機体のヘリコプターだ。
というか、色を別にしても明らかに普通のヘリではない。
軍用のそれのようにゴツくてデカい上に、前部にはガトリングガンまで装備されている。

誰もが呆然として、あるいは好奇の眼差しで見守る中、ヘリの横腹が開いて男が一人降りてきた。
ローターが巻き起こす風に白銀の長い髪をなびかせたその姿を見た綱吉が、思わずあっと叫ぶ。

「スクアーロ!?」

「久しぶりだなあ!沢田綱吉」

スクアーロは友好的と言えなくもないニヒルな笑いを浮かべ、轟く爆音にも負けない声で叫び返してきた。

ざわ… ざわ…

ギャラリーがざわめきながら一斉に綱吉に注目する。
その中でも特出した反応を見せたのは綱吉のクラスメイト達だった。
「なんだ、また沢田絡みか」と冷めた目を向けると、直ぐに窓から顔を引っ込めて、何事もなかったようにそれまでやっていた事に戻っていく。
彼らのそんな反応を目にした綱吉は危うく叫び出すところだった。
違うから!今回は俺のせいじゃないから!



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