キュッ、と栓を捻る音が上から聞こえてきたかと思うと、頭上から暖かな雨が降り注いできた。 シャワーのノズルを握ったザンザスが、真奈の頭から肩にかけて優しく湯をかけてくれる。 プールの塩素を流してくれているのだろう。 冷えた身体を温めるまでには至らないが、心情的には大分楽になった気がする。 ある程度身体を流し終えたところで、ザンザスはシャワーを止め、今度はジャクジーに湯を入れはじめた。 「そのまま入っていろ」 「え、ザンザスは?」 驚いて振り返る。 思った通り、やはり彼は濡れたタキシードのままだった。 顔色は悪くないようだが、寒くないわけがない。 濡れて色が濃くなった黒髪から水滴が滴っている。 「向こうにシャワー室がある」 「シャワーじゃ暖まらないよ」 水位を増していく湯に冷えきった足先が温められていくのを感じながら真奈は訴えた。 「一緒に入って」 「………はぁ?」 「だ、だから…ここに、一緒に入って!」 半ば開き直ってザンザスを見上げる。 「大きいから大丈夫。は、離れて入れば、見えないと思うし……」 「見えるだろう」 「み、見ちゃダメ!」 睨みあいと呼ぶには双方共に複雑な感情が入り混じった微妙な眼差しが交わりあう。 しばしそうして見つめあった後。 少女を見下ろし、男は小さく溜め息をついた。 |