温かいシャワーが上から降り注ぐ。
湯は腰より少し下の位置まで溜まっていた。

背後で大きな質量が動いたことを気配で感じとり、思わずびくりとしてしまう。
自分で言い出したにも関わらず、心臓が口から飛び出そうなくらいドキドキしている。

濡れた服を脱ぎ捨てたザンザスが浴槽に入って来ると、緊張はピークに達した。

背中を向けているから姿は見えないが、その恵まれた立派な体躯が発する気配というか、存在感のようなものははっきりと感じとれる。

ザンザスが、すぐ後ろにいる。

お互いに全裸で、こんなに近くに。

ザンザスが入ったことで湯の水位は上がっていた。
もう胸の下辺りまで来ている。

目眩を感じそうな現実に、思わず両手で自分の身体を抱きしめるようにして身を小さくしてしまう。

「──ぶはっ!」

突然背後で吹き出す声が聞こえた。

「何を緊張してやがる。自分で言い出したことだろうが」

「そ、そうだけど…」

遠慮なく笑われて、真奈はちょっとムッとした。
そんなに笑わなくてもいいじゃないか。

「それとも、期待に応えたほうがいいか」

「えっ?」

背後からずいっと伸びて来た腕に抱き寄せられる。
ザンザスの大きな身体に背中がぶつかった。
手が胸に当たっている。

「ザンザス!」

からかうのやめてほしい。もういっぱいいっぱいなのだから。

文句を言おうと振り返った真奈は、開きかけていた口を閉じた。

「馬鹿な奴だ」

ザンザスはもう笑っていなかった。
それどころか。

「せっかく我慢してやっていたものを」

その目を一目見てわかった。
欲望にぎらつく瞳。

この人は、自分に欲情しているのだ。

そう悟った途端、まるでアルコールを飲んだみたいに身体がカッと熱くなった。
ただでさえドキドキしていた心臓が、更に激しい勢いで打ち始める。

「ま、待って!」

「誰が待つか」

首筋にかぶりつかれる。
熱い。ザンザスの唇も、舌も。この人の身体全部が、燃えるように熱い。

「ザンザス!」

「誘ったのはお前だ」

「誘ってない!」

慌てて言うと、うるせぇ、と胸を鷲掴まれた。
大きな手の平に包まれた膨らみが、やんわりと揉まれてぐにぐにと形を変える。

「ザンザス…!」

焦って名前を呼ぶと、もう黙れと言わんばかりに唇を塞がれた。
ザンザスの唇で。

歯列を割って入り込んだ熱い舌に上顎を舐められ、怯えて縮こまっていた舌を捕らえられて絡めとられる。

「んぅ、ん…!」

ザンザスのことは好きだ。
ツナや山本達、リボーンに対する“好き”とは違って、一人の男の人として大好きだ。

胸の中に芽生えたその想い自体が愛しくて、ゆっくり大切に育てていきたかった。

でもこれはあまりにも速すぎる。
ジェットコースターどころかジェット機並みのスピードだ。
まだ心の準備が出来ていない。

角度を変えては、深く、情熱的になっていく口付け。
その間、ザンザスの手は真奈の肢体を確かめるように撫でていた。
脇腹を撫で上げられて、びくり、と真奈の身体が震える。

「ふ………はあっ」

ようやく口付けから解放された真奈は、完全に身体から力が抜けきっていた。

ザンザスは真奈を抱き上げてバスタブを出た。
ぐったりと脱力しきった真奈は赤ん坊のようにされるがままに身をゆだねている。

バスタオルでやや荒っぽく身体を拭かれてから、再び横抱きにされ寝室へ連れて行かれ、ベッドの上に横たえられた。


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