部屋に戻ったザンザスは居間を真っ直ぐ横切り、寝室から続くドアを開いて、そこに入って行った。

脱衣所にしては随分と広い。
右側は洗面台や鏡のあるスペースになっており、左側には磨りガラスのドアが二つ並んでいる。
それぞれサウナとシャワーブースといったところだろうか。

ザンザスはそれらのどちらも通り過ぎて、正面のドアを開いた。

大きな白いバスタブが真奈の目に飛び込んでくる。
ジャクジーも兼ねているらしいそれは、見た目にも巨大で、大人が二人でも三人でも入れそうだった。
壁の金具に簡易シャワーも掛けられている。
船の浴室としては何とも贅沢な設備だ。

ザンザスはバスタブの中に真奈の身体をそっと降ろした。
それまで彼の逞しい腕や身体から温もりを分け与えて貰っていたせいか、それが離れていくとなんだか急に心細くなってしまう。

「脱いで後ろを向け」

「う…うん…」

逆らう気力もなく、言われた通りに後ろを向き、ぐっしょりと濡れて既に着衣としての意味を為さなくなったドレスと下着を脱ぐと、真奈はそれをなるべく小さくまとめてバスタブの縁に置いた。
ザンザスの太い腕が後ろからひょいと伸びてきて、その赤い塊をさらっていく。

どうするのか、なんて考る余裕もなかった。
自分が脱いだばかりの服を触られたのだ。
ただひたすらに恥ずかしい。

真奈はバスタブの中にぺたりと座り込んだまま、両腕で自分自身を抱きしめるようにして身を縮め、震えながら目を閉じた。

必死に涙を堪える。

既に十分過ぎるほど呆れられてしまっているのだ。もうこれ以上この男に迷惑をかけたくない。



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