騒然とする中、駆けつけてきた招待客達がザンザスの行動に驚いている様子がざわめきとともに伝わってくる。 ──あのザンザスが… ──ザンザス様が… 先ほどからずっと謝罪と礼の言葉を繰り返している子供の母親も、内心ザンザスの行動に困惑しているようだった。 そんな彼らの様子が真奈は残念に思えてならなかった。 確かに、我が儘だし強引だし口は悪いし、物凄く凶暴ではあるけれど、この人は本当はとても優しい人なのに、と。 誰かが肩から毛布をかけてくれる。 すると、ザンザスはそのまま毛布で真奈の身体をくるむようにして彼女を抱き上げた。 俗にいうお姫様抱っこだが、状況が状況なだけに、ときめくどころか罪悪感で胸が押し潰されそうだった。 「お前が目の離せない女だということは、よく分かった」 「ご、ごめんなさい…」 地を這うような低い声で言われ、ギロリと恐ろしい目付きで睨まれては、迷惑をかけてしまった自覚がある真奈としてはひたすら恐縮するしかない。 こんな馬鹿騒ぎには興味はないとでも言いたげにまだ混乱状態にある人々を押し退けたザンザスは、真奈を抱えたまま真っ直ぐ客室へと向かった。 |