複数の人間が駆け寄ってくる気配がする。
男や女の叫び声。
誰が呼んだのかと疑問に思うより先に、真奈には確認すべき事があった。

「こども、は……」

「ガキなら無事だ」

我が子の名を叫びながら母親らしき女が駆け寄ってくるのを見たザンザスは、真奈とは反対側の腕に抱えていた子供を無造作に突き出した。
たちまち女の口から悲痛な叫びがあがる。

「るせぇっ。まだ生きてる」

さっさと診てやれと、うんざりした口調でザンザスに吐き捨てられ、真奈を診ようとしていた医師は、慌てて母親の腕に抱きこまれた子供に治療の対象を変更した。

意識を取り戻した子供が、わっと火がついたように大声で泣き出す。
水は飲んでいるだろうが、この様子ならば大事はないだろう。
泣き叫べるだけの元気があるなら命に別状はないはずだ。

「良かった……」

安堵のあまり真奈の全身から力が抜けていく。
その身体をザンザスの腕がしっかりと抱き支えてくれていた。



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