水飛沫とともに泡立った水を掻き分け、水中へと潜る。

思っていたよりずっと深い。
あるいは実際にはそれほどでもないのかもしれないが、今の真奈には暗い水が何処までも続いているように見えた。

(いた……!)

底のあたりに漂っている小さな姿に向かって泳いでいく。
どうやら子供は既に意識を失っているようだ。

小さな細い腕をどうにか掴んで必死に引き上げようとするが、水を吸ったドレスが身体に纏わりついて、なかなか上手くいかない。
次第に息が苦しくなってくる。
堪えきれずに空気を吐き出してしまったのと同時に、プールの中の水が大きく揺れた気がした。

黒い大きな影に覆い尽くされる。

不意に何者かの力強い腕が身体に巻き付いたかと思うと、一気に水面まで引き上げられた。

「こ…の、馬鹿がッ!」

不足した酸素を取り込もうとして激しく咳き込んだ真奈の耳元で怒声が響く。
そのままグイッとプールサイドに引き上げられた。

逞しい腕が身体を支えてくれている。

盛大に眉間に皺を寄せ、壮絶に不機嫌そうな顔で見下ろしてくる男を見上げ、真奈は、ザンザス…、と小さく呟いた。



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