スクアーロだ。
長い銀髪が夜風になびいている。

水を差されたような気分になったザンザスは、空気の読めねえカスザメがと内心舌打ちした。

「待っていろ」

そう短く言い置いて、真奈から離れていく。
充分に距離を取ってから彼はスクアーロに報告を促した。

(何を話してるんだろう……)

残された真奈は小さく首を傾げて、離れた場所に立つ二人の男を見守った。
かなり声量を抑えているらしく、低く話す彼らの声は聞こえない。

少しくらいなら動いても大丈夫だろうか。
いっそ話している姿が見えないほうが気にならないかもしれない。

そう思って足を踏み出すと、ザンザスがちらりと横目で真奈を見た。
彼がこちらを見ているのを確認した真奈は、指で背後の会場の壁を指してぐるりと動かして見せる。

回って来てもいい?

ザンザスは僅かに顔を顰めたが、注意の言葉は飛んで来なかった。
再びスクアーロに視線を戻して、短く二言三言告げている。
どうやら大丈夫らしい。
真奈は彼らの話が終わるまでデッキを散歩するつもりで歩き始めた。

デッキの外を一周する頃にはザンザス達の話も終わっているだろう。
そう考えて。



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