人が切れたところで、ザンザスは真奈を壁際へと誘った。
観葉植物とカーテンがある程度目隠し代わりになって、ホールのど真ん中にいるよりはほっと息がつける場所になっていた。

「疲れたか」

「ううん、大丈夫」

まだまだ平気と笑顔を返して、ザンザスが持ってきてくれたドリンクを口にする。
見た目はシャンパンそっくりだが、炭酸の入ったソフトドリンクだ。
ザンザスのグラスの中身は赤く、恐らくはワインだろうと思われた。
普段から水で割らずストレートのままのウイスキーだのテキーラだのを飲んでいるだけあって、かなり酒には強いらしい。

「イタリアでもお酒は成人してからなの?何歳から?」

「16からだ」

マフィアが法律を気にするのかと、少々呆れ気味な声音で返された。

「16歳かぁ。日本だと女の子が結婚出来る年齢だね」

「イタリアでは結婚は女は14で出来る」

「そうなんだ……あ、でもリボーンに聞いたんだけど、イタリアの男の人は結婚平均年齢が高くて、40前後で結婚する人が多いんでしょう?だから男女で年齢差があってもおかしくないぞって言ってたんだけど」

「…あいつはお前をどうしたいんだ」

「う、うーん?」

リボーンの思惑など自分みたいな小娘に理解出来るはずがない。
むしろ解ったらびっくりである。
それでなくてもリボーンには謎が多いのだ。

「そういえば、奴は家庭教師の名目で日本に派遣されたんだったな。お前にイタリア語を教えたのもあのカスか」

ザンザスが真奈の手からグラスを取り上げて近くのテーブルに置く。

「ううん。イタリア語は──」

骸に、と続けようとした声は、近くで巻き起こった一際大きな歓声にかき消されてしまった。



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