概して女の支度は時間がかかるものだとされている。
しかし、今回に限って言えば、着替え自体にはそれほど時間がかからずに済んだ。
学校の制服からドレスに着替えただけだからだ。

ザンザスの短い指示からは、着替えるだけでいいというニュアンスが感じとれたので、色々と不安はあったものの、真奈は着替えを済ませると直ぐに隣室に続くドアを開いたのだった。

「あの…」

開いたドアから覗きこむようにして、おずおずと声をかける。

ザンザスの赤い瞳がこちらを向いた。
彼はアンティーク風のカウチに座っていて、持て余すほど長い脚はカウチと揃いのオットマンではなく、テーブルの上に乗せられていた。
そのテーブルの上には、何かのケースが並べられている。

「来い」

指を曲げて招くザンザスのもとに歩いていくと、それらが宝石の入ったケースであることが分かった。
赤、青、緑──目がチカチカしそうなほど燦然と輝いている。



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