はっとして身構えた真奈の前で、唯一の出入口であるドアが開かれる。
入って来たのは、ニット帽を被った背の高い少年だった。

彼は雲雀と真奈を見比べると、真奈に視線を据えて無表情のまま口を開いた。

「移動するからついてきて」

「え、あっ」

雲雀が真奈の腕を掴んで自分の後ろに隠すように引っ張り、少年を睨みつける。

「骸様の命令だ。大人しくしていれば危害は加えない」

雲雀の視線にたじろぐこともなく、少年は眼鏡のブリッジを指で押し上げると、淡々とした口調で続けた。
直ぐに何かを仕掛けてくる様子はない。

真奈は雲雀と少年を交互に見ていたが、そっと雲雀から身を離して立ち上がった。

「真奈」

咎めるように呼びかける雲雀に「大丈夫です」と微笑んでみせる。

今の雲雀の状態を考えれば、ここで逆らうのは得策ではない。
もしも真奈が嫌がれば、雲雀は満足に動けない状態であるにも関わらず抵抗しようとするだろう。
酷い怪我を負っている雲雀をこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいかないし、そんな雲雀の足手まといになるのだけは絶対に嫌だった。

ドアの側に立つ少年のところまで歩いていくと、少年は真奈を先に外に出し、雲雀を一瞥してから自分も部屋を出て、再びしっかり施錠した。

それから暫く後。

覗き窓のある壁を残して入口を固められ、内側からは出られないようにされたその小部屋に、一羽の黄色い小鳥が迷い込んできた。



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