黒曜ランドの地下室に爆音が轟く。
建物を揺るがしたその爆発で崩れた壁の中から現れた並中の風紀委員長は、キャンキャンわめく犬を煮え滾る怒りのままに咬み殺すと、もう一人に向かって凄絶な微笑を投げかけた。

「やあ」

重傷を負いよろめきながらも、ゾッとするほどの闘気を纏ったその姿に、柿本千種は怯んで後退った。
目があっただけで殺されそうな錯覚すら覚えた。
立っていられるはずのない怪我をしているというのに。

「そういえば、真奈を連れて行ったのは君だったね…」

雲雀が、じり、と、また一歩にじり寄る。
そして、とびきり残酷な笑顔で宣言した。

「次は君を……咬み殺す」






「君、真奈を見かけたかい?」

窓を突き破って外に飛び出していったモノには目もくれず、雲雀は獄寺へ問いかける。
ここへ来るまでの間に何があったかは知らないが、彼も雲雀に負けず劣らず酷い有り様だった。

「いや……だが、たぶん上の階だ。罠を仕掛けて誘い込んできやがったから間違いねぇ」

上か。
行き先は決まった。

「クソッ、10代目…!真奈さん…!」

自分と同じく傷ついた獄寺に肩を貸してやりながら雲雀は上へと向かっていく。

そこにはあの男が──六道骸がいるはずだ。
そして、真奈も。

借りは必ず返す。
復讐という形で。
自分の受けた屈辱を、骸を這いつくばらせることで灌がなければ気が済まない。

三階の映画館まで辿り着くと、中から人の声が聞こえた。
忘れもしない六道骸の声。
それから、赤ん坊と草食動物の声も聞こえてくる。

「ツナっ…!」

扉の向こう側から真奈の悲痛な声が響き、肩を貸している獄寺の身体がびくっと動く。

──見つけた。

怒りに燃えた雲雀は、映画館へと続く扉に手をかけた。

あの子に手を出す者は、一人残らず咬み殺す。



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