「あ、じゃあ私、紅茶を淹れてきます。雲雀さんと骸の分も」

一触即発の不穏な空気が漂うなか、真奈はお茶を用意しようと立ち上がった。
雲雀と骸はまだソファを挟んで睨みあっている。

「──!?」

ドアに手をかけた途端、突然背後から凄まじい殺気に襲われた。

はっとして振り返るが、もう遅い。
直ぐ目の前に赤い剣の切っ先が迫っていた。

寒いような熱いような不思議な感覚が一瞬のうちに全身を駆け抜け、真奈は己の命の終焉を覚悟した。

──が、しかし、


「なるほど。想像以上ですね」


冷ややかな、けれど、僅かに面白がっているかのような美声が耳に届く。

赤屍の声だ、と認識出来るくらいには思考が回復してきた真奈は、改めて今の状況を確認した。

真奈の身体を貫くはずだった赤い剣は、彼女の左右からそれぞれ突き出された、白銀のトンファーと三叉槍にガッチリと阻まれている。
無論、雲雀と骸のものだ。
ソファの横に立っていたはずの彼らは、いつの間にか真奈を護る形で赤屍と対峙していた。

「な、な、な、ど──」

「落ち着いて。彼は本気で君を殺そうとしたんじゃないよ。それにしても随分性質の悪い男と知り合いなんだね、君」

「まったくです。さしずめ真奈さんに相応しいかどうか僕らを試した、といったところですか」

「クス…よくお分かりで」

パニック状態の真奈をよそに、顔だけは綺麗な三人の男達は話を進めていく。
しかも、どの顔も嬉々とした表情を浮かべ、油断なく武器を手に構えて戦闘態勢に入っていた。

「言葉のやり取りなどよりも余程確実な方法でしょう?彼女の傍らに添う者として適切かどうか、その持てる力の全てで私に示して頂きたい」

「面白いね。お望み通り咬み殺してあげるよ」

「クフフ…ご期待に応えて差し上げましょう」

「だ、ダメですよ二人ともっ!危ないから!!」

死んじゃうから!!

「僕がこの男より弱いって言うの?」

「僕が負けるとでも?」

「そ…それは、その……」

だって、この人、「死がイメージ出来ない」からって怪我しても瞬時に回復しちゃう不死身の魔人なんですよ!
なんていう事は、どちらを怒らせるのも恐ろしかったので口には出せなかった。
そんな事を口にすれば死ぬよりも恐ろしい目に遭わされるに違いない。「お前ら屋敷を壊すつもりか!」とリボーンが怒鳴りこんでくるまで、戦いの申し子達の死闘は続いたのだった。



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