じゃんけんぽん。

揉めるかと思いきや、意外にも組分けはあっさりと決定した。
数は両者平等に4対4。
問題はその面子だ。

「ハハッ、やっぱこのメンバーなのな。頑張ろうぜ」

相変わらず能天気というかポジティブシンキングな山本。

「10代目!俺に任せて下さい!奴らなんて余裕で果たして見せますよ!」

敬愛するボスと同じチームになって舞い上がっている獄寺。

そんな彼らとは反対に、沢田綱吉は極限青ざめていた。
直ぐ近くで六道骸と雲雀恭弥が睨みあいを続けていたからだ。

「…仕方ないね」

「…仕方ありませんね」

一悶着あるかと思われた天敵同士も、利害が一致した為か、ひとまず結託する事に決めたらしい。
しばし睨みあった末に、骸と雲雀はどちらともなく溜め息をついた。
勿論、馴れ合うわけではない。
彼らはあくまでそれぞれの意思で獲物を狩るつもりでいるだけなのだ。

「あの子を捕まえるのは僕だよ」

「クフフフ…おかしな事を言いますね。真奈さんは僕の標的ですよ、譲るつもりはありません」

「じゃあ、先に狩った者の勝ちということで」

「いいでしょう。勝つのは僕ですけど」

赤と青と黒の間で見えない火花が散る。
狩りかよ!と突っ込む余裕のある人間は一人もいない。

「こんな命がけの缶蹴りは嫌だーー!」

膝を抱えて啜り泣く弟の頭をよしよしして慰めてやっていた真奈がふと顔を上げると、敵チームにいる千種と目があった。
お互い苦労するね…
思いっきり気の毒そうな目で互いに見つめあい、アイコンタクト。
もはや溜め息も出ない。

「いつまでメソメソ泣いてやがんだ」

スパルタで定評のある家庭教師は愛用の中折れ帽の縁をクイと押し上げると、愛弟子に銃口を向けた。

ズガアァアン!
すっかり聞き慣れてしまった音とともにバタンと仰向けに倒れ込む綱吉。
一呼吸おいて起き上がった彼は、先ほどまでグズっていた少年ではなかった。
額で燃え盛るオレンジ色の炎。
別人の如く怜悧な印象を与える眼をした彼は、チームメイトをぐるりと見回して告げた。

「死ぬ気で勝つぞ」


こうして死ぬ気の缶蹴りが始まった。



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