チョコ争奪戦は、ボンゴレリング争奪戦の時と同じ順番、同じ組み合わせで行われた。 と言っても、あの時とは事情が違う。 争奪戦そっちのけで熱く拳をぶつけあった了平とルッスーリアの対決に始まり、ザンザスにチョコを捧げるために幼児に本気を出すレヴィと、全く事情が分かっていないランボの戦いを経て、ベルフェゴールと獄寺の対決を終えた今、深刻な怪我人は出ていなかった。 「すみません、真奈さん!」 ゴッ、とタイルに額を打ち付けて土下座する獄寺を真奈が慌てて止める。 「そんなっ、全然平気だから謝らないで」 「いえ!10代目のお姉さまのチョコを守りきれないなんて…守護者として、10代目の右腕として情けないです…!!」 くうっと悔し泣きを堪える獄寺だが、当の綱吉は「いや…こんな事でっていうか、ホント気にしなくていいから」と宥めながらも少々引き気味だ。 突然、「ぐわっ!」と叫び声が響き、綱吉達がいる廊下に何者かの身体が放り出された。 校舎の外で見張っていたはずのヴァリアーの隊員だ。 「何の騒ぎだい?」 「恭弥さん!」 「ヒバリさん!」 真奈と綱吉の呼びかけがハモる。 倒れこんだ隊員の後から姿を現したのは、この学校の風紀委員長だった。 「ヒバリさんまでチョコ争奪戦に参加するの!?チョコのために!?」 「校内への不法侵入及び校舎の破損。連帯責任でここにいる全員咬み殺すから」 「なっ、あいつ、校舎壊されて怒ってるだけかよ!」 「なんかこの光景見たことあるーー!!」 「嵐の守護者対決の時だな。懐かしいぜ」 能天気に笑う山本も相変わらずだった。 「ちゃおっス、ヒバリ」 「赤ん坊……また邪魔する気かい?」 雲雀の脳裏にもリング争奪戦の時のやり取りが蘇ったのだろう。 いささか不機嫌そうにリボーンを見下ろしている。 「今取り込み中なんだ。お前にも関係がある話だぞ」 リボーンがひそひそと何か説明したが、真奈には何を言ったのか聞きとれなかった。 「ふうん……そういう事か」 先ほどまでの不機嫌な様子から一転して雲雀が笑みを浮かべる。 「いいよ。僕も参加してあげる」 「恭弥さん!?」 「六道骸や猿山の大将を咬み殺せるいい機会だからね」 「この人やっぱり咬み殺したいだけだー!でも、そうだよな、ヒバリさんがチョコのために戦うとかあり得ないよな…」 「だよね…」 綱吉と真奈は納得して頷きあった。 「なに他人事みたいに言ってるんだい。君も咬み殺す対象の中に入ってるよ」 「ええっ、俺も!?」 「当たり前だろ。それより、ちゃんと校舎修理しておいてよ」 トンファーを手に歩いてきた雲雀が、ふと真奈の前で足を止めた。 じっと少女の顔を見つめる。 「あ、あの…」 「僕は抹茶チョコがいい」 「えっ?」 「甘さは控えめでね」 固まる真奈をよそに、言いたい事を言い終えて満足した雲の守護者は悠然と歩き去った。 |