こういうのを既視感(デジャヴ)というのだろうか。
仲間と共に佇む沢田綱吉の数メートルほど前、他の場所よりも高くなっている土手の上に黒尽くめの男達が居並び、綱吉を見下ろしている。
ボンゴレの暗殺部隊ヴァリアーの幹部達だ。
奇しくもリング争奪戦で初めて彼らと対峙した時と同じ場所である。
以前と違う部分があるとすれば、スクアーロの肩に真奈が米俵の如く担がれているということだろう。
突然拉致された真奈を追って来たらこの状況になったのだった。


「う"お"ぉい!!よくも騙してくれたなぁ、カスども!」

「で…でたーーっ!」

ビビる綱吉とは反対に、嬉しそうな笑顔で山本がスクアーロに声をかける。

「ハハッ、なんだスクアーロ、お前また偽物に騙されたのか?」

「うるせえ!またって言うんじゃねぇ、カスガキがぁ!」

いきりたって叫ぶスクアーロの肩が、背後からやって来たザンザスによってガッと掴まれた。

「よこせ」

答える間もなく、スクアーロの肩に担がれていた少女がザンザスの腕に掬いとられる。
真奈はぱちくりと目を瞬かせて自分を抱き上げた男を見た。

「ザンザス…」

「少し縮んだか?」

「縮んでないよ!ちゃんと伸びてるよ!」

「ここも脂肪が足りてねぇみたいだな」

「さ、触っちゃダメ!」

赤くなってじたばたしている少女の身体は、どこもかしこも柔らかい。
いずれはこの手で…と感触を堪能していたザンザスの足下に、突然どこからかツルハシが飛んできてドカッ!と突き刺さった。

「待てザンザス。そこまでだ」

「!」

ツルハシが飛んできた方角へ目をやると、やはりリング争奪戦の時と同じ場所に沢田家光が立っていた。

「ここからは俺が取り仕切らせてもらう。娘を離せ」

睨みあう門外顧問とザンザスの姿を見て、了平が、じり…、と後退る。

「な…この二人…なんて殺気だ!」

了平とはまた違った意味で引き気味だった綱吉に、バジルによって一枚の紙が渡された。
ご丁寧に死炎印まで押してある。

「9代目からの勅命だ。読むぞ」

家光が綱吉に告げる。

「『今まで自分は、家光の娘に相応しいのは沢田綱吉の守護者の内の誰かであると考えていた。
だが最近、死期が近いせいか私の直感は冴えわたり、他により相応しい相手を見つけるにいたった。
我が息子ザンザスである。
彼こそが彼女の伴侶に相応しい』」

「なぁっ!? それ、ただ『死ぬ前に孫の顔が見たいおじいちゃん』的な願望じゃないのーー!?」

綱吉が突っ込む。
もっともな意見だ。

「『だが、この変更に不服な者もいるだろう。現に家光はザンザスとの婚約を拒んだ』」

家光は勅命を読みあげながらザンザスを睨んだ。
こっちもたいがい私情が入りまくりだ。

「『そこで皆が納得するボンゴレ公認の決闘をここに開始する』……つまり、こういうこった。ヴァリアーと沢田綱吉の守護者達との、真奈の本命チョコレートを賭けた1対1のガチンコ勝負だ」

「チョコ一つのためにどんだけーー!?」

綱吉の叫びは虚しく夜空に溶けて消えた。



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