密命を受けて渡日していたスクアーロがヴァリアーのアジトに帰還した。
門外顧問・沢田家光の長女、沢田真奈が作った本命チョコレートを携えて。


「スクアーロが持ち帰った本命チョコレートにより、正式に9代目の了承も得られそうです」

「婚約披露式典も近々開かれるでしょう。これでいよいよ真奈様はボスのものですね」

ザンザス様、と呼ばれた男は、戦利品であるチョコレートを食べるでもなくただ指で弄んでいた。
部下達が口々に投げかける祝福の言葉を聞いているのかいないのか、黙ったまま酒のグラスを傾けている。
そこへ颯爽とした足取りでスクアーロがやって来た。

「う"お"ぉい、お呼びかボス?」

手柄を誉めてくれるのを期待しているのか、随分と機嫌がいい。

「真奈の本命チョコを持ち帰った褒美をくれるってんならありがたく頂戴するぜ」

得意気な顔をしてスクアーロが笑う。

しかし。
ス、と立ち上がったザンザスは、おもむろにスクアーロの頭をわし掴むと、凄まじい勢いでそのまま彼の顔面を机の角に叩きつけた。
ゴッ、とも、ガッ、ともつかない異様な音が響き、辺りに鮮血が飛び散る。

「なっ、何をしやがる!?」

痛みと驚きで涙目になりながら、ドクドクと血を噴き出している鼻を押さえてスクアーロが叫ぶ。
そんな彼を冷ややかに見下ろしたザンザスは、先ほどから手にしていた本命チョコレートを突然ぐしゃりと握り潰した。

「偽物(フェイク)だ」

室内にいた者達がざわめく。

「家光…」

動揺する部下達をよそに、ザンザスは静かに怒りをたぎらせていた。
すべては門外顧問の計略に違いない。
恐らく家光は、ザンザスがスクアーロを派遣する事を見越してわざと偽の本命チョコレートを用意しておいたのだろう。
そして、そんな事とはつゆ知らず、スクアーロはまんまと偽物を掴まされてしまったと言うわけだ。
ド畜生が……かっ消す!

ザンザスは大股に部屋を横切って歩き出した。
その後ろを慌ててスクアーロ達が追いかけていく。

「日本へ発つ。真奈からチョコレートを貰う奴らを……根絶やしにする」






「──へっくしッ!」

「ツナ、大丈夫?風邪ひいちゃった?」

夕食の席で盛大なくしゃみをした綱吉に、双子の姉の真奈が心配そうに声をかけた。

「いや…なんか急に寒気がしたっていうか…」

「誰かが噂してんのかもな」

お茶をすすりながらリボーンが言う。

同じ頃、イタリア某所から一機の自家用ジェット機が日本に向けて飛び立った。


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