準備をしてから合流するという真奈達と分かれ、何処へ行くのかと思えば、リボーンが綱吉達を連れて来たのは民宿の裏側の山だった。

「なんで海の近くに来たのに山登りなんだよ…」

死ぬ気になる前に死にそうだ。
綱吉は早くもリタイアしたい気持ちでいっぱいになった。

地元の人が使っているらしい細い道を進んで行くと、それほど歩かない内にすぐに開けた場所に出た。
大きさはそれほどではないが、深くて流れが早そうな川がある。

「海に行く前に、まずはここで軽くウォーミングアップするからな」

これまでリボーンの“軽く”が本当に軽かった試しがない。
きっと、未来の地下アジトで山本を鍛えた時以上のハイパー体育会系なスパルタになるに違いない。

「ちょ、ちょっと待てよリボーン、先に休憩し、」

「うるせーぞ。さっさと水に入れ」

「うわっ!?」

ドボン!と水飛沫が上がる。
綱吉がリボーンに蹴り落とされたのだ。
すぐに顔を出すかと思いきや、なかなか出て来ない。

「おい…ツナ?どうしたんだ?」

シーンと静まりかえった水面に焦って山本が声をかける。

「言い忘れたが、水中には凶暴な人喰い怪魚を大量に放してあるから気をつけろよ」

リボーンが言い終わるやいなや、たちまち水面がビチビチと跳ね始めた。

「じゅっ、10代目えええーーーーーーーー!!!!!」

獄寺は慌てて飛び込んだ。


「大丈夫ですか、10代目?」

「ああ…うん…一応生きてるよ……」

川辺の砂利の上にぐったりして座り込みながら綱吉が弱々しく応じる。
あれから獄寺に続いて山本もすぐさま川の中に飛び込み、リボーンが言うところの軽いウォーミングアップは終了した。
襲いくる魚の群れをかわしながら川下まで泳ぎきったのだ。
何とか生きて戻って来られたが、ひどい目に遭った。

「そっか?結構面白かったぜ」

「10代目は繊細なお方なんだよ!野性児のてめーと一緒にするんじゃねえ!」

相変わらず暢気な山本に獄寺が食ってかかるが、やはり疲れているのは綱吉だけで、二人はピンピンしている。
たぶんメンタル面のダメージの違いだろう、と綱吉は遠い目になりながら分析した。

「じゃ、いよいよビーチに移動するぞ。真奈達の準備も出来てるはずだからな」

「や…やった…!」

海で京子が待っていると聞いた綱吉は急に元気になった。

「ビーチってどっち!?」

「向こうだ」

「よし、行こう!獄寺君、山本!」

「お供します!」

「海まで競争か?よし!」

駆け出して行く生徒達を見送ったリボーンは、ニヤッと笑った。
待っているのは水着の女の子達だけだと思ったら大間違いだ。



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