バス停から歩くこと約10分。
長い階段を上がった先の、海を間近にのぞむ高台にその民宿はあった。

「すっげ、海が目の前にあるぜ!」

「絶景だな」

ここへ来る途中のバスの窓からも見えていたけれど、やはりこうして直に潮風を感じながら青い海を目にするとテンションが上がる。
それぞれ肩に荷物を担いだ山本と獄寺から少し遅れて、綱吉も民宿の前に到着した。

「や…やっと着いた…」

余裕のある山本達とは違い、綱吉はヘロヘロになっている。
バスを降りた後からここまで、リボーンに言われて女の子達の荷物を全部運ばされて来たからだ。

その彼のすぐ後ろには京子達が続いていた。
申し訳なさそうにしていた彼女達も、海を目にした途端明るい笑顔に変わり、きゃっきゃとはしゃいでいる。

「これぐらいでバテるなんて情けねーな」

綱吉にトドメを刺してくる家庭教師はビアンキの腕に大事に抱えられていた。
それはないんじゃないのかと思うものの、文句を言えば理不尽な暴力でやりこめられてしまうに決まっている。
綱吉はぐっと我慢した。
せっかく海に来たのだから、せめて京子の水着姿を拝むまでは無事にやり過ごしたい。

しかし、ヒットマンは容赦がなかった。

「荷物を置いたらすぐに集合しろ。最初の訓練場所に移動するぞ」

「ええっ、いきなり!?」

「当然だぞ。そのための強化合宿だからな」

「頑張りましょう、10代目!」

「ハハッ、なんかワクワクするぜ」

自称右腕と親友は何だかやたらやる気になっているようだ。
獄寺は純粋に腕を磨いて綱吉の力になりたいと考え、山本は根っからの体育会系なのでドンと来いな心境なのだろう。

「ツナ君、頑張って!」

「ツナさん、ファイトです!」

京子とハルが綱吉に声援を送る。
真奈とイーピンが「ありがとう」と礼を言って綱吉が持っていた鞄を受け取った。

「重かったよね、ごめんね。部屋には自分達で持って行くから大丈夫だよ」

「あ…うん」

全然重くなかったのでいいのだが、気にしなくていいと綱吉が口に出す前にリボーンの声が聞こえてきた。

「技を磨くのは重要だが、それを使いこなせるだけのカラダがなけりゃ話にならねえ。今回の修行は、基礎体力の底上げが目的だ。ネッチョリ鍛えてやるから覚悟しろよ」

「ネッチョリやだーーーーー!!」

綱吉の魂からの叫びは当然無視された。



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