「ツナ君達、大丈夫かな?」

「ツナさんなら心配いりません。今までだって数々の困難を乗り越えてきたんですから!」

誇らしげにエヘンと胸を張って断言するハルに、京子がそうだねと笑って同意する。
友人二人の会話を聞きながら、真奈も別行動を取っている綱吉達の事を考えていた。


「今回、俺は奴らを殺す気でしごくからな」

今回の強化合宿が決まった際に、リボーンは「明日は国語の勉強をするからな」と言うのと同じ調子で真奈にそう言った。

「ダメだよ!リボーンが殺す気でやったらほんとに死んじゃうよ!!」

「なら、生かさず殺さず、生死の境界ギリギリで行くか。想像を絶する苦しみだぞ」

「それもダメ!」

必死でそう訴えたのだが、何処まで考慮して貰えたかは分からない。
山に向かっていたから、崖から蹴り落とされるか、ピラニアか何かを放流した川を泳がされるか、あるいはその両方をやらされているのではないかと心配だった。

リボーンのスパルタはただのスパルタじゃない。
ハイパー・スペシャル・死ぬ気のスパルタだ。
今まで数々の戦いを経て成長しているとはいえ、まだ身体的に成長しきっていない未成年の肉体には過酷すぎるのではないかと心配だった。
こんな風にあれこれ思い悩むのは、戦いに参加する事のない立場だからなのだろうか。
そんな甘い考えでどうする、とリボーンに叱られてしまいそうだ。
それとも、お前は心配し過ぎだと呆れられるだろうか。

「真奈ちゃん、海ですよ!」

ハルのはしゃいだ声に顔を上げると、目の前に青い海が広がっていた。
太陽の光を受けてキラキラと輝いている。

高台にある民宿から砂浜までは、階段を降りればすぐだった。
今更ながらに海水浴客達の賑わいが耳に飛び込んで来る。

視界の両側、ちょうど今立っている位置から見て左右それぞれの方向に海の家が見える。
海水浴客の数は、まあそれなりと言った感じだ。
芋洗いになるほど混雑はしておらず、これなら余裕を持って泳ぐ事が出来そうだった。
リボーンが普通に泳ぎを楽しませてくれるなら、だが。

「早く着替えちゃおう」

「そうだね」

「京子ちゃん、真奈ちゃん、向こうにビアンキさんがいますよ!」

ハルが指差したのは右側にある海の家だった。
店の前に立てかけられたよしずの前に立っているビアンキが、こちらに向かって小さく手をあげる。
イーピンも一緒だ。
シャマルもいる。

「こっちよ。そこの個室で水着に着替えなさい」

「はーい!」

「なんだかワクワクするね」

笑顔で楽しそうな京子に真奈は頷いた。
あまり心配そうにしていたら、せっかく海合宿を楽しもうとしている京子達の気持ちに水をさすことになる。

とにかく、綱吉達と合流する前に着替えておかなければ。
京子やハルに続いて真奈も個室の一つに入った。



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