「白蘭様」

真奈の為に用意した白いクッションベッドに胡座をかいて座り、昨日彼女が転がされていた辺りを指でなぞっていた白蘭は、新任の伝達係の声に後ろを振り返った。

「日本のメローネ基地より連絡がありました。花が届いたそうです」

きちんとブーツの踵を揃えて背筋を伸ばしたレオナルドがファイルを読み上げる。

「あっそう。もう届いたんだ?ほんと仕事が早いよね、レオ君は」

「いえ、そんなっ…」

「いやいや本当だよ、感心してる。真奈チャンの事もさ。想像以上に手際がよくて驚いたよ」

にこにこと笑いかけ、白蘭はそのままごろりと横になった。
頬杖をつくようにして肘をつき、レオナルドを見上げる。

「真奈チャンといえば、やっぱりいないと寂しいもんだね。今頃どうしてるかな」

「は……そろそろ研究施設に到着する頃かと」

「だといいけどね」

薄く笑んで、白蘭はゆっくりと白くふかふかしたクッションベッドの表面を撫でた。

「そうだ、レオ君。この部屋にも花を飾って欲しいんだけど、後で持ってきてくれる?」

「は、花ですか…?」

「うん」

今はいない少女のぬくもりを追うようにクッションの表面を撫でていた白蘭は、軽く瞳を伏せて今度はそこに頬をすり寄せた。
甘い残り香を探して、くんと鼻を鳴らす。

「ダチュラの花をね」



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