──どうやら自分は人質ではなくモルモットだったらしい。

監禁生活二日目にして真奈は改めて白蘭という男の得体の知れなさと異常性についての認識不足を思い知ることとなった。
ヤバそうな男だとは思っていたが、想像を遥かに越えていた。

コードの先についたプラグのような形をした長くて太い検査針を引き抜かれる痛みに顔を顰め、無表情のまま作業を進めていく白衣の人間達の目的について考える。

どうやらここは検査室か何かのようだ。
四方がガラス張りになっている部屋の中には、普通に暮らしていてはおよそお目にかからないだろう専門的な機械や器具の数々が所狭しと並んでいる。
一部の機械はMRIやCTスキャンのような病院の検査機器に似ていなくもないが、やはり10年後の未来だけあってもっと高度な性能の物なのだろう。

朝からずっとこの部屋のリクライニング式の診察台の上に寝かされ、血を採られたり、プラグみたいな針を刺されたり、何かよくわからない薬を打たれたりと、目的不明な検査を延々と行われているのだった。
検査の妨げになるせいか、食事も摂っていない。

なんの説明もなくこんな目に遭わされて、自分でもよく騒いだり暴れたりしなかったものだと思う。
しかし、これまで気力で何とか自制してきたものの、さすがにそろそろ限界だった。
ひどい目眩がして、微かに吐き気もする。

(でも頑張らないと……)

助ける、と言ってくれたのだ。“彼”は。

恐らくは何か彼なりの目的があってここに侵入しているのだろうが、真奈を救出するのは“ついで”にしては危険が大きい仕事のはずだ。
そんな危険を侵してまで助けようとしてくれているのに、こんなところでくじけるわけにはいかなかった。



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