それにしても、ただの疲労にしてはどうもおかしい。
次第に意識が朦朧としてきて、思考があやふやになりはじめている。
さっき点滴で打たれた薬のせいかもしれない。

途切れがちになる意識の端で、突然辺りが騒がしくなったことがわかった。
慌ただしく移動する複数人の足音。

「電波障害、ねぇ…」

不意に白蘭の声が耳に飛び込んできた。
のんびりとした声音が真奈の鼓膜を揺らす。

「でもまあそういう事ならしょうがないか。レオ君、どこか適当な部隊に連絡してくれる?別棟にある研究セクションに移送するから、真奈チャンの護衛と監視につくようにって」

「は…はいっ」

重くて堪らない瞼を開くと、思いのほか近くに胡散臭い笑顔を浮かべた白蘭の顔があった。

「痛かったでしょ?ごめんね。よく頑張ったね。あともう少しだから」

白蘭が笑顔で真奈の頭をよしよしと撫でる。

「実はちょっと問題が起こっちゃってさぁ……今から君には別の施設に移ってもらうことになったんだ」

「白蘭様、搬送の手配が完了しました」

何処かと連絡を取っていたらしいレオナルドが戻ってきて白蘭に伝えた。

「ん、ご苦労様」

白蘭の着ているそれに似た白い制服姿の男が二人やってきて、真奈を素早くストレッチャーに移す。
そこへ白蘭が身を乗り出すようにして顔を覗き込んできた。

「真奈チャンがいなくなると寂しくなるなぁ。でも、終わったらまた戻っておいで。その時は、君の弟の沢田綱吉君やその仲間達と一緒に楽しいゲームをして遊ぼう──約束だよ、真奈チャン」



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