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しかし、楽しくなるどころか、その翌日の魔法生物飼育学の授業において、ドラコはヒッポグリフに怪我を負わせられ、彼にとっては波乱の一年を予感させる幕開けとなってしまった。

自業自得とはいえ、腕に白い包帯を巻いた姿は痛々しい。
パンジーなどは、ドラコを心配して気遣うのとハグリッドを罵倒するのとを延々繰り返している。
しかも調子に乗ったドラコが重傷であるかのように振る舞うものだから、彼らはグリフィンドールばかりか他寮からも冷ややかな注目を浴びているのだが、本人達は一向にこたえた様子はなかった。
まったく打たれ強いんだか打たれ弱いんだかわからない。

「あの程度の怪我で大袈裟に痛がるようでは、磔の呪文にかけられたら数秒も保たないな」

物騒なことを言ってリドルが意地悪く笑う。
彼は腕組みをして石壁に凭れていた。
夏の香りを残した涼しい風が、石造りの渡り廊下を吹き抜けていく。
ここは広いホグワーツ城の敷地内でも滅多に人が来ない場所だった。
普段は黒猫の姿で暮らしているリドルも、誰かに見られる心配がないとあって、今は本来のハンサムな青年の姿に戻っている。

「磔の呪文ってすごく苦しいんでしょう?私もダメ。きっと一分も耐えられない」

なまえはそう言うと、手にした杖をまっすぐ廊下の端に向けた。

「アクシオ!」

あらかじめ離れた場所に置いておいた石がぴょんと跳ね上がり、数センチほどこちらに向かって宙を飛んだ。
が、しかし、手元に来るには至らない。

「杖の振り方が違う。肘を曲げるな」

「アクシオ!」

「絶対の意思を持って“命令”するつもりでやれ」

リドルの冷静な指示が飛ぶ。
彼と二人きりの時には大抵こうして魔法の練習に付き合って貰うことになっているのだ。
意地悪だしスパルタだが、お陰でまだ今の学年で習っていない魔法まで使えるようになってきている。

「アクシオ!」

鋭く叫んだ瞬間、勢いよく石が飛んできて、パシッと音をたててなまえの手の平の中におさまった。

「で、出来た!」

「どれだけ時間がかかったと思っている。出来て当然だ」

リドルが呆れて言った。
彼みたいな天才と一般人を一緒にしないで欲しい。
むうっと膨れたなまえの頬を指で引っ張って、リドルがくくと笑う。
サディスティックでいて、惚れ惚れするような魅惑的な笑みだった。


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