リドルの特別性は魔法における才能だけにとどまらない。 強固な意思を感じさせる涼しげな双眸だとか、さらっさらの黒髪だとか。 端正な顔立ちといいカリスマ性といい、天は二物も三物も彼に与えたようだった。 「どうした?ご褒美が欲しいのか?」 リドルがなまえの唇に親指を這わせながら囁く。 「え、ううん、そんな…」 言いかけた瞬間、唇に柔らかいものが重ねられた。 キスをされたのだと驚く暇もなく、今度は唇を押し入って、生暖かい舌が侵入してくる。 「ふ、ぁ…んぅ…ッ、」 息をついたと思えば、間髪いれずまた角度を変えて口腔内を蹂躙される。 初めて知った。 男の人の唇がこんなにも柔らかくて心地よい感触のものだということも。 熱い舌でくちのなかを舐められる、ゾクゾクするような感覚も。 何もかもが初めての経験だった。 蛇のような赤い舌が触れ合う唇と唇の隙間から垣間見え、は、と漏れ出た吐息とともに、再び口腔へと消えていく。 後頭部を支える手に頭を撫でられると、切ないような不思議な気持ちになった。 きゅん、と胸が締め付けられるこの感覚はなんだろう? 「んんん、んーっ」 閉じた瞳から涙が滲むのを見たリドルは、ようやく唇を離してくれた。 「これだけで腰が抜けたのか?まあ、初めはこんなものかもしれないな」 互いの唾液で湿った唇をペロリと舐め上げて、ふにゃふにゃになったなまえを抱き支える。 今のキスでこれまで覚えた魔法が全部頭から吹っ飛んでしまった。 「安心しろ。これからはこっちの練習もしてやる」 耳元で甘く囁かれた不穏な内容にも反応を返せない。 ただ、魔法の特訓と同じく、容赦ないスパルタ指導になるだろうことは何となく予想がついた。 |