1/4 


ホグワーツの大広間の天井は、今夜の空と同じく真っ黒な雲で覆われていた。
吸魂鬼と遭遇した後では、比喩でもなんでもなく、まさしく暗雲たちこめる新学年の始まりであるように思えてくる。

ダンブルドアが魔法省の用事でホグワーツが吸魂鬼を受け入れている事を説明する間、生徒達は不安そうな表情で校長の話に耳を傾けていた。
ただし、ドラコをはじめとする一部のスリザリン生だけは、ニヤニヤと意地の悪い笑いを浮かべてハリー・ポッターを眺めていた。

「さて、次は楽しい話題に移ろうかの。今学期から新任の先生を二人お迎えすることになった」

吸魂鬼についての話を終えたダンブルドアが言った。

「まずはルーピン先生。闇の魔術に対する防衛術の担当を引き受けて下さった」

気のない拍手をする者、歓迎の意をこめて熱心に拍手をする者と、反応は様々だ。
ドラコなどはルーピンの継ぎ接ぎだらけのローブを見て、あからさまに馬鹿にして鼻を鳴らした。
生徒達を見渡したルーピンがなまえを見てにっこりする。
彼と同じく教員席に座ったスネイプは、例の如くムスッとした表情のまま、お義理で三度ほど手を叩いただけだった。
次にハグリッドが魔法生物飼育学の教授に就任したと発表され、グリフィンドールのテーブルから一際大きな拍手が沸き起こった。
他のテーブルは微妙な反応だ。

「あーあ、まさか使用人に授業を受ける日がくるなるなんて……父上が聞いたらどんなに嘆かれるか」

ドラコが演技がかった声と表情で言って溜め息をついたので、パンジーがクスクス笑った。
クラッブとゴイルもガーゴイルみたいな顔を歪めてニヤッとした。
彼らに限らずスリザリン生の反応はどれも似たようなものだったが、なまえはまったく別の心配で頭がいっぱいだった。

「ねえ、魔法生物飼育学って、禁じられた森の近くでやるでしょう?大丈夫なのかしら」

「何が?」

校長の号令により、テーブルの皿にパッと料理が現れ、一年生が歓声をあげる。
いよいよ歓迎会の始まりだ。

「吸魂鬼。学校の入口を見張るって言っていたけど、森はギリギリ『外』だから…」

「怖いのかい?」

ドラコがちょっと笑った。
ハリーやハグリッドをからかう時のような嫌味な笑い方ではない。

「大丈夫さ。むしろ僕は歓迎したいね。奴らと出くわしたポッターが悲鳴をあげたり気絶するところを今度こそ直に見られるチャンスじゃないか。今年は楽しい一年になりそうだよ」


  戻る 
1/4

- ナノ -