飲み会で集まった友人達が心霊スポットに肝試しに行くと言い出した時、そもそもなまえは反対したのだ。 興味本位でそんな場所へ行くべきではないと。 でも、止められなかった。 アルコールの力を借りて気が大きくなっていた友人達は、冷静な判断力を失ってしまっていたのだ。 友人の一人が親戚の土地に心霊スポットになっている病院の廃墟があると言い出したことで、勢いは加速した。 結局、なまえはそんな友人達を放っておくことが出来ず、一人だけ飲んでいなかった子が運転する車で隣県まで国道を走り、山の中にある比良坂病院という廃墟にやって来たのだった。 「うわ…雰囲気あるねぇ」 「いかにも何か出そう」 車から降りた友人達はどんどん病院の中に入って進んでいく。 なまえも遅れないように彼らについていった。 「ねえ、やっぱり帰ろうよ」 「ここまで来てそれはないでしょ」 「絶対何か撮れるまで粘るよ!」 ここは、“よくない”。 なまえの勘がそう告げていた。 「じゃあ、写真撮ろう。何か写ってたら帰ろうね」 「よし、撮るか」 「お前、そこに立てよ。手術台のとこ」 「いいけど、撮れてもどうせオーブくらいだろ」 「せめて人型のものを撮りたいね」 友人達が撮影会が開始したことで、なまえはほんの少しだけ安心していた。 このまま何事もなく済めばいい。 そう思っていたのだ。 手術台の前に立っている友人の背後に浮かぶ生首を見つけるまでは。 「後ろ!逃げて!」 「おいおい、おどかそうたってそうはいかな」 ブシュッ!と友人の肩から血が噴き出す。 生首が彼の肩の肉を食い千切ったのだ。 たちまち辺りに叫び声が響き渡った。 「やだ!なにあれ!なにあれ!」 「生首!?嘘だろ!」 「早く逃げて!」 生首の動きは素早かった。 逃げようと動き出した友人の一人に噛みつき、また鮮血が飛び散る。 なまえはパニック状態に陥った友人達とその場から逃げ出したが、いつの間にか他のみんなとはぐれてしまった。 そして、運が悪いことに、あの生首はなまえを追いかけてきていたのだった。 何とか空き部屋に滑り込み、扉を閉めることが出来たが、そんなことで諦めるつもりはないのか、生首は扉に何度も体当たりを繰り返している。 「赤屍さん…助けて…」 震えながら扉を押さえていたなまえは、ふと横の壁に掛けられた大きな鏡に視線を向けた。 曇ってはいるが、なまえの顔がぼんやりと映っている。 「うそ……」 その顔は、映画で見たゾンビのように変わり果てていて、両目は白濁していた。 |