足音こそしないものの、侵入してきた何者かが畳の上を滑るように近づいてくるのがわかる。
とても人間の歩き方とは思えない。

その何者かは、布団の敷かれた辺りまで来ると、一旦そこで足を止めた。
何かを確認しているかのようにほんの少しの間立ち止まっていたが、再び歩き始める。

今度は、なまえが隠れている襖の方向へ向かって真っ直ぐに。

そして───










「見つけましたよ」










開いた襖の向こう、暗闇に溶けるような黒衣に身を包んだ赤屍が微笑んでいた。


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