ウェイトレスの仕事を終えたなまえは、勤務時間が終わるのを待っていた赤屍を伴ってアパートに帰宅した。

男性──それもすこぶるつきの美貌の男を招くには、あまりにも小さく狭い部屋に思えて少し恥ずかしかったが、赤屍のほうは気にしていないようだった。
物珍しげに辺りを見回すでもなく、ごく自然な態度で部屋に入った後は、なまえが示した場所に大人しく座っている。

赤屍が視線をなまえから動かしたのは一度だけ、黒い学ランを羽織った大きな黄色い鳥の縫いぐるみを見た時だけだった。
親戚の女の子から貰った品である。
その時も、再びなまえに視線を戻して「可愛いですね」と微笑んでみせただけで、嫌な感じはしなかった。

紳士なのは分かっていたはずなのに、二人きりだからか、自分の部屋に赤屍がいるという状況のせいか、妙に緊張してしまっている。
そんななまえを落ち着かせようと、彼は何気ない会話で気をまぎらわせてくれた。

二人で食事を済ませ、喫茶店や共通の知り合いの話をしたりする内に時間は刻一刻と過ぎていく。
普段入浴する時間には、「私の事は気にせず入ってきなさい」と赤屍に追いたてられるようにして風呂に入った。

そして、"その刻"を待つ。


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