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ひとつに溶け合ってしまうのではないかと思う程ぴたりと重なり合っていた肌が離れていくと、途端に肌寒さを感じた。
冷たい空気が二人の間に割って入ったせいだ。

こんな事は初めてだった。
初めて会ったばかりの男性と初めて会った日に関係を持ってしまうなんて。
やっぱり私は馬鹿なのかもしれない。

でもこの人になら全てを預けてもいいと思えたのだ。
後悔はない。

今まで誰とも深い関係になった事がないなんて信じられない、と彼は言った。

「こんなに魅力的なのに、貴女の周囲の男達は余程見る目がない男ばかりだったのでしょうね」

身体のあちこちを滑る手の感触を心地よく感じながら、私は自分のトラウマになっていた過去の出来事を彼に話した。
見る目がないのは私のほうだ。
しかも、あんな酷い男とは知らず、それまでせっせと尽くしまくっていたのだからいっそ笑えてくる。

「まだ若いからなのかもしれませんね。二十代ではまだそういった女性の良さは理解出来ないのでしょう」

私の髪を指で梳いて弄びながら彼は小さく笑った。
その笑い方も彼自身も、夜に相応しいと私は感じた。
夜の闇を固めて造ったようなひと。

「彼らが三十代四十代になって結婚を焦りはじめた頃、かつて蔑ろにしたタイプの女性が実は理想的な結婚相手だったと知って、逃した魚は大きかったと後悔するはずですよ」

「そういうものでしょうか…」

「そういうものですよ」

彼はクスと笑みをこぼした。

「勿論、貴女がそれまで待つ必要はありません。彼らは彼らで似合いの相手と楽しくやるのでしょうから、貴女は貴女に相応しい相手を見つければ良いだけのことです。貴女の理解者となる男を、ね…」

それは暗に、自分こそが私の理解者なのだと告げているようで、私は胸の奥から沸き上がる喜びに流されるままに、今度は自分から彼を求めた。

細い腰に跨がり、
綺麗に割れた腹筋に手をついて、彼を貪ったのだった。


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