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その男の人は、他の男性とはどことなく違う感じがした。
涼しげな佇まいだけど、他人を寄せ付けないオーラがあるというか、なんとなくアングラな関係の人なのかなと思わせる雰囲気があったのだ。


──クルクルクル…クックー。

鳩の鳴き声みたいな音がお腹からしたせいでその場の注目を集めてしまった私に、彼は「お腹が空いたのですね」と優しく微笑み、「そういう体質だというだけです。おかしな事ではありませんよ」と宥めてくれた。

いわゆる“街コン”と呼ばれるイベントが開催されているせいで、通りには大勢の男女が行き交っている。

参加者の証となるバンドを貰って手首に巻いたところで、さっきの鳩時計である。
女性のクスクス笑いや男性の視線が突き刺さって痛い。


──グルグルグル…。
今度はライオンが喉を鳴らすような音がお腹から聞こえてきて、私は赤面した。
もうこの空気の読めない消化器を全取り替えしたいぐらいだ。

男性が他の参加者からの盾になるような位置に立ち、私に言った。

「お腹のライオンさんと貴女に是非食事をご馳走させて頂きたいのですが、ご一緒して頂けますか?」


その人は、赤屍蔵人と名乗った。


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