00:25


い呼吸が、暗闇に包まれた廊下に反響する。
最初の絶頂を迎えて力の抜けたさくらの体を、僕はそっと抱え上げて廊下の床の上に横たえた。その隙に、彼女の下半身から部屋着とびしょ濡れになった下着をはぎ取り、脱衣室に向かって放り投げる。
余韻にぴくぴくと震える太腿を撫でてやるだけで、彼女は再び声もなく達した。その痙攣が収まらないうちに、僕は彼女の膝裏に手を入れてその脚をがばりと割り開いた。
その性急な手付きに、虚ろに宙を彷徨っていたさくらの視線が僕の上で焦点を結ぶ。

「れいさん……、まって、」
「待たない」
「やだ、だめ、今はまだ……」
「今はまだ、イってる最中だからだめだって?」

弱弱しい制止の手などあっさりと無視をして、僕は彼女のぐずぐずに蕩けた入り口に自分の屹立を擦り付けた。先端がめり込み、彼女の目が大きく見開かれる。

「まって、おねがい、ほんと、に」
「嫌だ」
「ほんとに、だめ、だめなの」

彼女のチェリーレッドの唇が戦慄く。その艶やかな唇がいかにもおいしそうに見えて、僕はまだ何かを言おうとしていた彼女の腰を抱え上げた。

「今これ以上されたら、へんになっちゃ」

う、と最後まで言い切ることは出来なかった。その言葉が聴こえる前に、質量を増した僕の肉棒が、彼女の体を一気に奥まで貫いたからだ。

「あ……ッ?」

突然襲ってきた圧迫感に彼女は目を白黒させていたが、僕のものを飲み込んだ胎内の反応は正直だった。

「あっ、あっ、――ッ、――んぅっ!」

固い床の上に散ったさくらの長い髪が、リビングから漏れる明かりを反射して艶やかに輝く。洗いたてのいい匂いのするそれが、僕が彼女の腰を掴んで揺するたびに波打って、ぱさぱさと小さな音を立てた。

「は……っ、あ、んっ」
「く……っ、さくら、」
「やあっ、これ、深い……!」
「……ああ。君のナカが、僕のものを飲み込んできゅうきゅう吸い付いてきてる」
「ッん――!」

暗闇の中でもはっきりと見て取れる白い肌を、男の欲望を蠢く内壁で包み込んでいる平らな腹を、僕はぐっと掌で押した。そうすることで最奥まで埋め込まれた僕のものがいい所に当たったのか、彼女は両手で自分の口を覆って身悶えた。固く瞑られた眦から一筋の涙がこぼれ落ちて、彼女のこめかみを伝って髪の中に落ちていく。
それを名残惜しく見送りながら、僕は彼女を怖がらせないようにその手首をそっと握った。

「……さくら」
「っん、」
「さくら、手を退けてくれ」
「…………?」

僕の頼みを聴いて、彼女は不思議そうな顔をしながらも大人しく手を口から外してくれた。すかさず首を伸ばして彼女の唇に吸い付くと、必然的に繋がりが深くなって、抱え上げた彼女の太腿がびくりと揺れた。

「ふ……、ん、んっ」
「さくら……」

彼女の上げる嬌声ごと飲み込むように唇に齧りつき、舌を絡めとって吸い上げる。一定のリズムで奥を突き上げてやれば、彼女は僕の律動に合わせて膣内を収縮させた。

「んっ、んッ、んぅっ!」
「ん……、」
「――っ!んんぅ――ッ!」

何度も腰を奥に打ち付けて、絡めた舌に歯を立ててやれば、さくらは小刻みに肩を震わせながら軽くイった。

「あ……ふ、」
「はー……、これ、まずいな」

このままでは、僕も長くもちそうにない。そう呟きながらゆっくりと体を起こすと、どちらのものかも解らない唾液が互いの唇を繋いだ。さくらの瞳はとろんと蕩けきっていて、その体からはすっかり力が抜けてしまっていた。
彼女がこんなにも無防備な顔を晒してくれるのは、この世界で僕だけなのだ。そのことを強く実感して、彼女のナカを穿っていた僕の肉棒がさらに大きさを増した。それを敏感に察知した彼女は、大きく目を見開いて困惑したように頭を振った。

「ぁ、なんで、おっきく……っ」
「……、さあ。誰のせいだろう、なっ」
「あっ!あっ、……そんな、ぐりぐりされたら、おかしくなっちゃう……っ」
「おかしくなってもいいよ。むしろ、おかしくなった君を見せてくれ」

僕が猫なで声を作って言うと、彼女は懸命に腕を伸ばして僕のシャツにしがみついてきた。そう言えば、猛った欲望を早く解放したい一心で、服を脱ぐのもそこそこに体を繋いだのだった。僕に縋り付く彼女の首許にも、ふわふわした肌触りの部屋着とレースに縁取られたブラジャーが絡まっていて、白い胸元とのコントラストが際立っている。
彼女が荒い呼吸を繰り返すたびに、大振りな乳房が上下した。その先端でつんと尖った乳首も、当然彼女の呼吸に合わせてゆらゆらと揺れる。

ごくりと、自然に喉が鳴っていた。

「ひゃうっ、?」

最奥を突かれていっぱいいっぱいになっている彼女の胸元に、僕はそっと両手を忍ばせた。固くなった乳首を爪でこりこりと引っ掻いてやると、彼女は予想外の刺激に目を白黒させて喘いだ。

「いや、いやッ、……れいさ、れいさん、」
「さくら、僕はここにいる」
「あっ!あ、また、おっきいの、きちゃ……ッ」
「ああ。――イけ」

過ぎた快楽に逃げを打つ体を抑え込み、僕はさくらの子宮口を抉るように、円を描くように深く穿った。それだけでなく、僕のものを飲み込んだ入り口の少し上、襞に隠された花芯を親指の腹でぐっと押してやると、彼女は喉を仰け反らせながら絶頂を迎えた。

「やっ、あッ、――っ!」

後頭部が床に擦り付けられて、木目の上に散らばっていた髪が乱れる。彼女の胎内がぎちぎちと僕のものを締め付けて、搾り取るように収縮した。

「……くっ、――僕も」

気持ちいい。このまま中に出したい。
本能のままにそう呟くと、彼女の奥がきゅう、と締まった。その瞳が一瞬怯えたように見開かれたのを僕は見逃さなかったが、さくらは僕を拒むような素振りを一切見せなかった。むしろ、

「……わたしも、」

もっと奥まで、零さんが欲しい。
と、彼女は蕾のような可憐な唇から、淫靡に男を誘う言葉を紡いだ。

ぷつりと、今度は僕の理性の糸が切れる音がした。

横たわる彼女の体を脇から持ち上げるように腕を差し入れ、背中側から肩を掴む。そのまま細いうなじに顔を寄せると、僕は彼女に断りもせずに滑らかな肌に咬みついた。

「いっ……!」
「ふ……、」
「れい、さ、それ、いや……っ」

薄い皮膚に歯を食い込ませて吸い上げると、痕が残ることを心配してか、悲鳴のような泣き言が聞こえてきた。だが、もはやそれは僕を煽るものにしかならなかった。

「ぅあ、イく、イく……っ」
「く……ッ、」
「――あっ!あ……ッ!!」

ズン、と僕が最奥を突いた瞬間、さくらの体が大きく痙攣し、胎内が急激に締まった。その蠕動にはさすがに耐えきれず、僕は薄い避妊具越しに彼女のナカに精を放った。

「はー……っ、」

全てを出し切って、僕が彼女のうなじから顔を上げると、そこには生々しい情交の痕が残されていた。だが、今の彼女はそれに対して怒れるほどの気力も残っていないのか、大きな瞳を零れそうなほど蕩けさせて僕を見つめていた。

「……背中、痛くないか?」
「……いいえ、平気よ」

でも、せっかくお風呂に入ったのに、またこんなに汚れちゃった。
そう言って彼女は自分の胸元の汗を拭った。その仕草が言いようもなく色っぽくて、僕は性懲りもなく自分の下腹部に血が集結していくのを自覚した。

「それなら、また入りなおせばいい。今度は僕と一緒にな」
「……。それって……、またいやらしいことを考えてない?」
「さあ、それはどうだろうな?」

飄々とすっとぼけながら、僕は汗で張り付く前髪をかきあげた。その仕草にさくらがぽっと頬を赤らめるのを見て、これは強引に押せば落ちるだろうな、と僕は密かに手ごたえを感じていた。

結局この後、互いの汗と体液で汚れた体を清めるために一緒に風呂に入った僕たちは、背中を流し合っているうちに再び盛り上がってしまい、二人してのぼせそうになったのは完全に余談である。だが、同じシャンプーの匂いに包まれてベッドに横になった時、僕の心はぽかぽかしたもので満たされていた。

とろけそうなほどに甘ったるい、冬の香りがした。
幸せな予感に満ち溢れた、新たな冬の一日が、今また始まろうとしていた。



Fin.