「高杉のヤロー……」
ぎりぎりと歯をかみ締めながら来た道を戻る。
私の唇を奪った高杉のヤローを許さない…っ! なんでよりによって私なんだ!もっと可愛い子いるだろーが!
階段を下りながらそんなことをぶつぶつと言っていると、先生に出くわしてしまった。 えっと、名前はたしかー…服部先生?んでも、間違ってたら失礼だし。適当に呼んどくか。
「あ、お前、Z組の。なにサボってんだ。さっさと教室行けよ」 「分かったよ、お痔さん。」 「誰がお痔さんんんん!?ちょっと字が違うよォォォ!?」 「痔が違う?」 「それも違うんだけどォォォォ!?」
そういえば、この人。教師なんだし高杉のことも多分知ってるよね。 なんか脅しの道具になるようなこと聞けないかな?
「おじさん、あのさ。私と同じクラスの高杉晋助っているでしょ?あの人についてなんか知らない?なんかこー…脅せるようなこと。」 「あ、なおった。脅せるようなこと!?そんなこと知るか!あー…あいつ、」 「え?なんか知ってんの!?」
「中二病だぞ」
うわぁ、うざい。
何が中二病だぞ、だよ!そんな情報、クソほどいらんわ! 脅しに使えるようなって言ったのにィィィィィ!そんなの脅しにも使えないっつーの!
「ま、さっさと教室戻って授業受けな。」 「ちぃっ!」
舌打ちして、それから痔教師と反対の方向へ歩き出す。 うわぁ…教室戻りたくねー…。もうすぐ教室着いちゃうよ。ものすごい一歩一歩が重たいよ。 どうするよ、教室行ってから高杉と気まずくなることくらい目に見えてるだろーがァァァ! 帰ろうかな、もう家帰っちゃおうかな。
多少、イライラしながら教室へ向かう。 んー…よくよく考えてみたら、私あんなかっこいい人とキスしたんだね。 うん、そうだ!そういう感じで考えればなんかムカつかなくなってきたぞ!それなら他人に自慢できるし! …あ、でも私、忘れてたけど芸能人のことが好きなんだよな。んー…あれはあれで好きだけどやっぱり身近にいるイケメンに手ェ出したほうがいいしね! こんな私にキスしてくれたんだから!うん、いいね。イケメン最高だね。中二病いいね。
一人でガッツポーズをしたりする私を不審な目で見る教師が数名。そんなこと、私は全然気にしないけど。 教室に着いたころには授業は始まっていて、中に入りにくい雰囲気だったから廊下でこっそり待っていようと考えた私は廊下から教室をこそこそと覗いていた。
「(ふーん…みんな真面目に授業受けれるんだぁ…)」
いつもは動物園みたいなクラスなのに。こんなに静かに授業受けることも出来るんだな、と少し感心する。 そんな時、ヴーヴーと携帯のなる音が教室中に響き渡った。
それは高杉の席の方から音が聞こえてきて、高杉も携帯を見ていたけど高杉のじゃなかったっぽい……。 ま…まさかのまさかァァァァ!?
「(ポケットにない…まさか私のかァァァァ!?)」
多分、私の携帯が鳴ったんだな。 …うん、終わったな。私の携帯……
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