チャイムが鳴りそうだった。そろそろ教室に戻らないとやばいと思った私はダッシュで教室に戻ろうとしたけど、先生に言われたことを思い出したから回れ右。そのまま階段を駆け上がって行った。 最後に先生が「高杉はよく屋上で昼寝してるから」って言ってたから。屋上までダッシュ。 ここまで全力疾走したの久しぶりだよ、私……
「た、高杉ィィィィ!出てこいや!」
息を切らせながら屋上を歩く。 高杉なんてどこにもいないじゃん。どこにいるって言うんだよ、甘党銀髪馬鹿。
「チッ、いねェじゃんか。殺す、銀髪殺す。私がどんだけ必死に走ってきたと思ってんだアホーーー!」
無駄に叫んだ。本当、無駄に。
「うるせェよ、ブス。てめぇこんなとこで何してんだ?」
あ、無駄じゃなかった。
「誰がブスじゃああああ!アンタのことを授業に出させろっつーから来たの!先生からの命令なの、これは!だから本当、お願いします。私と教室来てください」 「行くか、馬鹿」 「来いやァァァァァ!」
屋上のさらに上…と言ったらいいかな?なんかそんな感じのタンクみたいなもんの上で寝転がってる高杉と引っぺがして無理やりでも教室に連れてってやる!とか、考えたけど、私が高杉を引っぺがせる訳ないじゃん! もう、どうすりゃいいんだァァァァ!
「とりあえず、お願いします。もうマジで!お願いだから。本当!」 「……」 「無視すなァァァァ!」
私の言葉をするりと無視する高杉さん。 んー、教室に連れてかないでここで高杉の寝顔眺めてるのも悪くないかも。写メとか撮っちゃったら脅しの道具とかにもなりそうだしね。授業、ちょっとサボるくらい大丈夫だよね。
「…そんなん私が出来る訳ないじゃないか…」
私が授業をサボるなんてダイナミックなこと出来ないよ。出来たらすごいよ、進化したよ、私。
「もういいや。先生に怒られても知らないし。私、関係ないし。私なんかに任せたあのクソ教師がいけないんだ!」
ぶつぶつと文句を言いながら私は屋上から去ろうとする。もう高杉なんか知ったこっちゃないね!どーなってもいいもんね、アイツなんか!
「おい、」 「…なっ」
低い声が聞こえたところで私が振り返ると高杉が目の前にはっきりと映し出された。 こんな間近で高杉見たのは初めて…いや、そうじゃなくてェェェ!
「ぷはっ」 「教室行ってやんよ」
息苦しい。本当に息苦しい。私がスーハーと呼吸をしていると高杉が喉で笑いながら屋上から出て行った。 唇に変な感触があったのは間違いないから……普通に考えると私は高杉に大事な大事なファーストキスを奪われたことになるね。うん、そうだよね…
「アイツ許さねェェェェ!」
屋上に私の叫び声がこだましたとき、丁度チャイムがなった。 あーあ…私って運悪いな……
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