「おはよう」 「おはよう……」
寝不足の私。それでも学校に来なければならないという現実が付き纏っているんだよね…。 はぁ、つらい。学校に来るのがつらいよ、お母さん。
だって、高杉と同じクラスで隣の席だよ。 あり得ないよ、本当。
目の下にくっきりとクマを残した私は階段を上り長い廊下をずっと進まなければならない。 歩いている途中に色んな人に出くわすけど、挨拶する元気なんて今の私にあるはずがない。
「おはよう、凛ちゃん。大丈夫?元気なさそうだけど……」 「大丈夫……。なんとか元気でいられそうだよ……。」
寝不足の理由なんて誰も聞くわけがない。 てか、誰かに聞かれても答えたくないもん。
「どうしたの?そのクマ。」 「寝不足アルか?凛。どうしたネ」
き、聞かれたァァァ!!
「は、話すと長くなるよ…?」 「別にいいアル。話せヨ」
「じ、じゃあ…話しますけど……」
神楽ちゃんと志村さんにだけはこの話を聞かせることにした。 聞かれたんだから。多分、言わなかったら神楽ちゃんにギッタギタのメッタメタにされると思うんだ。 そんなの絶対嫌だから。
「昨日、テレビ見すぎたんだよね…。好きな芸能人が出てるテレビがあってさ…深夜にやってるんだけどどうしても見たくって……」 「凛が恋アルか?」 「そう!恋だ!これが恋ってことなのかァァァ!!」 「あっさりね。本当にそうか分からないけど…」 「でも、多分そうだよ!だってテレビ見たあともその人のこと考えすぎて寝れなかったんだよ!?」
「恋ね」 「恋アル」 「やっぱりだァァァ!!」
遂に私にも春が訪れたんだ…っ!! でも、テレビの向こう側の人だよ?会うこと出来んのか出来ないのか…。
「諦めた方がいいんじゃねーかァ?」 「あら、高杉君」 「うっさいわ!女とっかえひっかえしてる奴に言われたくないね!お前、学校ロクに来なかったのになんで来てんのさ!」 「水城いじんの楽しいし」 「ふざけんな、コノヤロー!ちょ、一発殴らせろーぅい!!」 「まあ、凛、落ち着け」 「これが落ち着いていられるかっっ!!」 「そうでさァ。ってことで一発殴らせろ土方」 「なんで俺ェェェ!?」
ったく、高杉は引っ込んでてほしい……。 なんで、こんなに高杉がむかつくのか分かんないし。 ってゆーか、なんで高杉なんだろ。
私の思いを踏みにじったからだろうけど。 とにかく一発殴りたい。殴らせてほしいィィィ!!
「うるせェよ、水城。ちょっと静かにしろ。」 「これが静かにしてられるかァァァ!」 「高杉さんの顔見ただけであんなになるなんてよっぽど嫌いなんですね」 「あったりめェだい!あんな薄情な奴……でも、かっこいいから嫌いになるとか本当無理なんだけどね!」 「え?嫌いじゃないんですか?」 「嫌いだよ!でも顔は好きなんだよ!」 「もう、こいつ訳分かんねーよ!よっぽどの面食いだな!」 「それがなんだ!面食いで何が悪いっ!イケメンは世界の宝だぞ!?」 「いや、アンタのイケメン話なんて聞きたくもないわ」
「おい、銀さんの存在忘れないで。HRの時間だから。席、つけー」 「ちぃっ!」
席、って言ったら高杉の隣かよ! ったく…嫌な時間がはじまるぜ!
「大丈夫よ、凛ちゃん。多分高杉くん、学校来てるけど授業はサボるわよ。」 「マジで!?マジで!?やったぁぁぁああ!」
少しはマシになったな、これで。 でも、今からは授業じゃなくてHRだから…まだ高杉はいるよね…。
「水城、お前後で俺んとこちょっと来い」 「なんでェェェ!?私、悪いこと何もしてないのにィィィ!」 「お呼び出しだ、凛」 「かぁぁ!人事みたいに言いやがってよぉ!」
ちぃぃっ!もう高杉ってなんなのさぁ! なんか涙出てきそうだよ、私。何が悲しいのか分からないけど涙が出てきそうだよ、お母さん…
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