Rachel

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覇気出すなって! [1/3]


本日の天候は快晴。
雲ひとつない青空に、比較的おだやかな波。
まさに絶好の釣り日和だった。

今日は特にこれと言った仕事もなく、任務も受けていない。
だから起きてからは、ご飯を食べて、ジョズと鍛錬をして、おやつを食べて、武器の手入れしてるビスタの邪魔をして、ご飯を食べて、ステファンと昼寝して、おやつを食べて、書類出せっていうマルコから逃げて、仕込みをしてるサッチの目を盗んでつまみ食いして、そして今まさに釣りに興じるところだった。
夕飯にはまだ早いが大物でも釣ってサッチに届けてやろう。

そう思って船べりに腰を下ろしたが、いかんせん今日は調子が悪いらしい。
竿はウンともスンとも言わず、運よく引いても手の平サイズの魚やゴミばかり。
暇つぶしも兼ねていたのに、これでは余計に退屈だ。
溢れ出る欠伸を抑えながらエースは独りごちた。

「ふわぁ〜…、いつもは、もっと釣れるのになぁ〜」

今日の波のように、のどかに揺れる釣り糸を見て諦めようかと思った、その時だった。
突然、竿が大きくしなった。
慌てて立ち上がると、更に強い力で引かれた。

「これはっ、大物だ…!」

竿が折れてしまいそうなほどの引きに、思わず口の端がつり上がる。

(これで、さっきのつまみ食いもチャラだな!)

大きな魚を抱えて喜ぶサッチを思い浮かべて、エースは両腕に力を込めた。
不安定な船べりで、体重を後ろに掛けて体全体で竿を引く。

(あと、少し…!)

水面にユラユラと揺れる影が現れて、エースは渾身の力を振り絞った。

「よっしゃー!大物ゲッー…ト…?」

しかし喜びも束の間、釣り上げた勢いで船べりから落ちたエースは、体勢を立て直すのも忘れて、それに見入った。

何故だか良く分からないが目が合ったのだ。
釣り上げた“魚”と。

「きゃっ!!」
「うわっ!?」

そうして“魚”と見つめ合っていると衝撃は当然のようにやってきて、甲板に尻餅をついたエースは痛む尻を抑えながらなんとか立ち上がった。

「〜〜〜っ!」

勢いよく釣り上げた“魚”も甲板へ体を打ったらしく一人で悶絶している。
しかし、おかしいのはその“魚”に髪の毛や腕が生えていることだ。

「あれ?魚…じゃねぇのか?」
「ひゃっ!?」

そっと覗き込んでみると、“魚”は大げさに飛び跳ねた。
しかし、その動きは鈍く、顔を大きく歪めると甲板に蹲ってしまった。

「大丈夫か?」
「どーしたんッスか?隊長?」

ケガでもしたのだろうか、その小さな肩に手を伸ばそうとしたら、後方から声がした。
振り返ると、二番隊の隊員が不思議そうに近寄ってきた。

「いや、なんか大物釣ったと思ったんだけど…」
「って、エース隊長!それ魚じゃありません!」

慌てふためいている部下をよそに、エースが呑気に後頭部をポリポロと掻いていると、隊員の声を不審に思った他の船員たちもやってきた。
気付けば、「なんだ?どうした?」と数人の船員たちに囲まれていた。

「っ!?」

集まってくる船員たちを目にした“魚”、もとい人魚の少女は、驚いたのか慌てて逃げ出そうとした。
しかし、その尾ヒレはビチビチと甲板を叩くだけで一向に進まない。
一体なにをしているのかと不思議に思っていると、その右肩にキラリと光る何かを見つけた。
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