Rachel

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それ魚じゃありません! [1/2]


ここは、とある夏島。
偉大なる航路を順調に進んでいた麦わらの一行は、停泊したこの島でログが溜まるまでの間を思い思いの方法で過ごしていた。
ある者は買い物に出かけ、ある者はビーチで遊び、ある者は船でのんびり寛いでいた。

そんな中、浜辺で体育座りをした少女が深くため息をついた。
海辺ではナミやウソップが楽しそうにビーチボールを弾ませている。
更にルフィとチョッパーも浮き輪に乗って、楽しそうに海の上を漂っている。

(いいなぁ…)

リルは再びため息をついて、心の中で呟いた。
自分も一緒に海で遊びたかったが、リルにはそれが出来ない理由がある。
塩水に浸かったら人魚になってしまうからだ。

どうやら、この島は人魚や魚人に寛大な島ではないらしい。
騒ぎになってしまうかもしれないし、どこに悪人が潜んでいるかは分からない。

ナミに釘を刺され、仕方なく浜辺でみんなを眺めていたリルだが、正直羨ましい気持ちでいっぱいだった。
普段ならこんな羨望を感じることもないはずなのに、自分以外が楽しそうにしていると何故か妬ましくなってしまう。
絶対に入ってはいけない、と言われれば尚更。

(こんなことなら、わたしも街に行けばよかった…)

今日は少し足が痛むから、とサンジの誘いを断ったことを後悔した。
ちなみに、ロビンも買い物に出掛けている。
しかし、今更ひとりで街に出るのも不安だった。

「リル?また何か作るかっ?」

リルが詰まらなさそうにしているのが見えたのだろう、チョッパーが浮き輪を抱えて浜辺へ戻ってきた。
少し前にチョッパーと一緒に作った砂の山はいつの間にか崩れていた。

リルは小さく首を横に振ってから、筆談用のボードを手に取った。

「リル?」

“先に戻ってるね”

そう書いた紙を見せると、チョッパーは少し寂しそうな顔をした。
リルは立ち上がると、おれも戻るぞ!と付いてくるチョッパーを制して、ひとり船へ戻った。
島の裏手に隠れるように停めてあるメリー号に帰ると、甲板では大きな口を開けたゾロが居眠りをしていた。

(よく寝てるなぁ…)

いつも思うが、彼は起こさなかったら一体いつまで寝ているのだろうか。
そんな疑問が浮かぶと同時に、ひとつの名案が頭をよぎった。

今メリー号は、島民に見つからないように人目に付かないところに停めてある。
もちろん、周りには誰もいない。
いるのは大きな寝息を立てているゾロだけ。

(少しだけなら…いいよね?)

誰に断る訳でもないのに、リルは周囲をキョロキョロと見回してから、そっとボードを置いた。
そして、痣を隠すための包帯を解いてから海へと飛び込んだ。

飛沫の音でゾロが起きてしまったかもしれない、と思い、そっと海面から顔を出してみたが、静まり返った辺りには海の波打つ音と、木々の囁く音しかしない。

「ちょっとだけ、だから」

リルは尾ヒレを揺らして海へと潜った。
そこから少し泳いで再び海面へ顔を出すと、島が親指くらいの大きさに見えるまで沖にいた。
これだけ離れていれば流石に見つからないだろう、とリルも海を楽しむことにした。
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