飲み込んだ甘い秘密 [2/3]
「……に侵入する許可を貰いたいんだが」
「あら?女子部屋に煙突はない……」
偶然とはいえ盗み聞いてしまった会話に、リルは心の中がモンモンと渦巻いていくのを感じた。
(侵入…?煙突…、プレゼント、赤い衣装…)
浮かんだ単語を一つひとつ頭の中で反芻していると、いつの間にかルフィがてっぺんに一等大きい星を取り付けていた。
歓喜に沸くその様をボーッと見つめていると、ポンと肩を叩かれた。
「リルちゃん、これからケーキの盛り付けするんだが、一緒にやるかい?」
いつもだったら、喜んで手伝っただろう。
しかし、先ほどのサンジとナミの会話が頭をよぎって、素直に頷くことが出来なかった。
自分は一体どうしたらいいのだろうか。
流石にリルもそこまで鈍感ではないが、だからと言って追及してもいいのだろうか。
混乱したまま、リルはサンジの手伝いを断った。
(と、とりあえず、部屋に戻って…じっくりと考えてみよう…)
しかしそれで考えが纏まるはずもなく、堂々巡りで呻っているリルを助けてくれたのは、またしてもロビンだった。
「どうしたの?」
“あの、倉庫にもう一つあった袋って…”
何か知っている風なロビンに恐る恐る聞いてみると、困ったように笑うだけだった。
ロビンが何も言わない、それはそういう事なのだろう。
ここは自分も心に秘めておかなければならないのだ。
ようやくそう納得したリルに、ロビンは笑いながらこう言った。
「ひとつ提案があるのだけど」
「?」
その妖艶な笑みに不用意に頷いたリルは、このあと粘土と絵具とニスまみれになろうとは、思いもしなかった。