Rachel

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穏やかな風が頬を撫で、晴れ渡った空が見下ろしている。
古典的な街並みには芸術的なモニュメントがよく映えた。
そう、ここは芸術の街。


* calm autumn days *


季節は夏、天候は晴れ、気温は高くもなく低くもなく、過ごしやすい気候だった。
そんな秋島に日が昇りきった頃に辿り着いた一行は、開発中の秘密兵器があるというウソップを残して全員が上陸した。
街そのものが芸術的なこの島は買い物以外にも色々と楽しめそうで、皆それぞれに街へ繰り出して行った。

そんな中、食材の買い出しに行こうと思っていたサンジは、ぼんやりと街を眺めているリルを見て予定を変更した。

「プリンセス、おれとデートしませんか?」
「?」

声をかけられて一瞬呆けたリルだが、すぐに意味を理解したようで、可愛らしく頬を染めた。
そうして、サンジとリルは連れ立って街へ向かった。

この街は古びた石やレンガ作りの建物が多く、一体なにを表しているのかよくわからない抽象的な造形物が並んでいる。
商店の建ち並ぶ通りには個性的な手作りの物を売っている店が多く、職人が多いのだろう、道行く人々もどこか個性的だ。
女の人はみな綺麗に着飾っていて、この通りはなんだか女性が多い気がする。

(流石、芸術の街)

見て歩くだけでも十分楽しめそうだと、サンジは心弾ませながら振り返った。

「どっか行きたいところはあるかい?」

しかしサンジの心とは裏腹に、リルは俯いて足元を見ながら歩いていた。
サンジの声に反応して顔を上げたかと思うと、小さく首を横に振った。
デート気分で浮かれていたのはサンジだけで、すっかり置いてけぼりになっていたらしいリルを見て慌てて足を止めた。

「遠慮しなくていいんだよ?買い物とか、服とか」
“前にナミにいっぱい買ってもらったから大丈夫”

一つ前の夏島で大量の荷物を持たされていたウソップを思い出したが、リルはいつも3、4着を着まわしている気がするのは、サンジの思い過ごしだろうか。
季節を考えても、買ったものを全部着ているとは思えない。
女性の洋服はいくつあっても足りないくらいだと思っていたサンジとしては、彼女が遠慮しているようにしか思えなかった。

(それとも気に入ったのがなかったのか?)

そういえば、リルはいつもワンピースを着ていた。

「じゃあ、おれが何か買ってあげるよ」

今日は上陸にあたり、ナミから小遣いの支給があった。
サンジは食材の買い出しもある為、いつも多めに貰っているのだ。
もちろん、そのほとんどを食材に費やしてしまうが、無人島で集めた食糧がまだ少し残っている。
ログは5日、食材は明日仕入れる予定だったので今日は懐に余裕がある。

しかしリルは慌てたように首を振った。

「なんで?服じゃなくてもアクセサリーとか…」
“十分だよ”

本当はサンジとて、リルが服に困っているとは思っていない。
ただ何か理由をつけて買ってやりたいだけだ。
それなのに何故か頑なに拒むリルに、仕方なくサンジも断念した。

(あとで、こっそり何か買うか)

本人に物欲がないのなら、勝手に似合いそうなものを見繕ってしまおう。
そう考えてサンジは、この先のデートコースを買い物から切り換えた。

「じゃあ、あそこ行ってみないかい?」

サンジが指差した先には高台があり、何かの名所なのか随分と賑わっている。
それに頷いたリルを確認してから歩き出すと、背後からベシャッという謎の音がした。
驚いて振り返ると、道の真ん中で蹲るリルがいた。

「リルちゃんっ!大丈夫か!?」

どうやら石畳の隙間に靴が引っかかったようで、急いで助け起こすとリルは恥ずかしそうに俯いた。
しかし脱げたその靴を拾ったサンジは、何か違和感を覚えた。
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