Rachel

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「なんとか振り切ったな…」
「いやー、危なかったなー」
「アンタのせいでしょ!」

沖まで出て落ち着いたところで、ヘラヘラと笑うルフィにナミのゲンコツが振ってきた。

島を離れたことで霧も晴れ、穏やかな波が続く。
慌てて島を出てきたから、みんな買ってきたものを仕舞ったり、とりあえず腰を下ろしたりしている。
サンジも食材を仕舞おうと甲板にあった袋を持ち上げた時だった。

「……」
「……」

袋の横にある木箱に何か見えたような気がして、思わず静止してしまった。
それに合わせて何故か他のクルーたちも無言になる。

「誰だ?おまえ」

その沈黙を破ったのは空気の読めない船長だった。

「だっ、誰だ!?」
「いつのまに!?」

ゾロやウソップは驚いて身構えるが、当の本人は不思議そうな顔でキョロキョロするだけ。
木箱にちょこんと座った可愛らしい少女を見て、流石に敵襲だとは思えず一同は困惑していた。

「ヤベっ…」
「サーンジく〜ん?」

海軍に追われていたことですっかり忘れていたサンジは、思わず口元を押さえた。
もちろん、その呟きをナミは聞き逃さなかった。

「どういうこと?」
「いや、その…」
「別に誰をナンパしてもいいけど、船に連れ込まないでくれる?」
「そんなんじゃあ…!」
「じゃあ、誘拐してきたの!?」
「違います!」

ナミの顔がどんどん近付いてきて、嬉しいやら恐ろしいやら。

サンジはここまでの経緯を説明して、決してお持ち帰りでも誘拐でもないことを訴えた。
チョッパーもフォローしてくれたお陰で、なんとかナミの追及は免れたものの、問題はなにも解決していない。
このまま船に乗せるわけにもいかないし、引き返すにしても島はもう見えない。

皆どうしたものかと首を捻っていたが、ルフィだけは少女を物珍しそうに眺めている。
少女も居心地悪そうにしながらも、ルフィを見つめ返す。

いったい何を見つめ合ってるんだ、とゾロが首根っこを掴んだところで、ルフィがニシシっと笑った。

「おまえ仲間になるか?」
「はぁ?」

ルフィの突然の勧誘に、ゾロはデジャヴを感じて頭を抱えた。

「おまえなぁ…」
「いいじゃんかよ、だってもう島も見えないし戻れないだろ?」
「だからって、なんで仲間になるんだよ!」
「なんとなくだ!」

ウソップの突っ込みも虚しく、ルフィは大威張りで仁王立ちした。
こうなってしまうと、もう誰も止められない。
そう悟っているのは、ここにいる全員に同じような経験があるからだ。

「あなたはどうしたいの?」

先ほどから一言も発しない少女に、ロビンが優しく語り掛けるが、少女は考え込むように俯いてしまった。
しばらく少女が何も答えないものだから、痺れを切らしたゾロが眉間にシワを寄せた。

「なんとか言ったらどうなんだ」
「…っ」
「おいっ!」

睨まれてすっかり怯えてしまった少女を庇うように、サンジはゾロの前に立ちふさがった。

「恐がってんじゃねぇか」
「あぁ?そいつがなんも言わないからだろ」
「聞き方ってモンがあんだろ!それにこの子はなぁ…!」
「やめなさい!」

――バキィ!

一触即発の雰囲気にナミのゲンコツが飛んできて、ゾロとサンジの頭は甲板にめり込んだ。
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