Rachel

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君が落ちるまで、あと少し [3/4]


「なぁ、サンジー、腹減ったー」
「はぁ?…あああああああぁ!!?」
「メシぃー」

普通ならあり得ないルフィの顔の向きに、サンジが再び叫び声を上げたが、もう誰も意に介さずに話が続いた。

「あら、もうお昼を過ぎてるわね」
「ば、バケモノ…!」
「でもサンジくんがコレじゃあ…ねぇ?」
「なんなんだ!お前ら!」
「作れねぇのか?」
「おれを食っても上手くねえぞ!」
「無理だろー、こんなチビには料理なんて」
「無理じゃねぇよ!できるよ!」

ナミの意味深な笑みとウソップの挑発的な言葉に、興奮していたサンジは思わず反論してしまい慌てて口を噤んだ。

「おー!作ってくるかー!」
「えっ、あ…」
「よろしくねー!」
「くっ…、」

しかし、聞き逃してくれるような相手ではなく、もはや取り消すことは不可能だった。
かくして、サンジにとっては誘拐犯である皆の昼食を、文句を言いながらも作ってくれた。

「うめぇー!やっぱ小さくてもサンジはサンジだな!」
「ちょっと崩れてるけどな!」
「うるせぇー!」
「サンジ!ウマイぞ!」

小さい手が包丁を握る様は心配ではあったが、食べた皆の反応はおおむね良好だった。
リルもさっそく頂こうとは思ったが、どうにも箸が進まないのは、決して焦げているからではない。

「どうしたの?リル」
「あぁ、それ…私のと交換しましょう?」

そう言ってロビンが手にしたのはサンマの塩焼きが乗った皿で、リルの前には頭と背骨を取った食べかけのサンマが置かれた。
いつものサンジなら、リルに魚の姿が丸々と残った出し方をしないのだが、今のサンジは知らないのだから仕方がない。

ロビンの気遣いに感謝してサンマを食べようとしたが、サンジはあからさまに不貞腐れたようだった。

「別に…マズイなら残したっていいよ!」
「何言ってんだ?うまいぞ?」
「そーよ、それに残すなんて言語道断!ただでさえルフィのせいで食糧難なのに…」
「海じゃ何が起こるか分かんねーんだぞー?」

幼いながらも、調理中のサンジには料理へのこだわりを感じられた。
それなのに、まるで食材を無駄にするかのような発言をするものだから、ナミやウソップが毅然と畳み掛けた。
ウソップはともかく、ナミに叱られてサンジは言い返せず不満そうな表情だった。
彼はまだ、海での食材の重要性に気付いていないようだ。

「なんだよ!もういいよ!」
「あっ!サンジ!」

孤立無援の状況を察したのか、チョッパーの制止も聞かずにサンジはダイニングルームを飛び出していった。
リルが慌てて後を追って甲板に出ると、そこには思いもよらぬ光景が広がっていた。
いつの間に起きたのか、ゾロがサンジの首根っこを掴んで宙吊りにしていたのだ。

「どこから紛れ込んできやがった」
「なにするんだ!離せ!」

どうやら知らぬ子供が迷い込んだと思っているようで、ゾロは暴れるサンジを睨みつけていた。
慌てて止めようとリルは駆け出した。

「離せー!!」
「チッ!ウルセーな…勝手に乗るんじゃねぇ。ここは海賊船だぞ」
「え!?」

鬱陶しそうなゾロの言葉に、サンジが驚いて天を仰ぎ見たと思ったら、激しく動揺し始めた。
もしかして、これが海賊船だと気付いていなかったのかもしれない。
慌ててゾロの服を引っ張ると、ようやくリルの存在に気付いたようだ。

「あ?なんだ」
“離してあげて。それサンジなの”
「は?どれが?」

未だサンジを釣り上げていたゾロは、リルが見せた紙を見て首を捻ったので、必死にサンジを指差した。
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