Rachel

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君が落ちるまで、あと少し [2/4]


「やめなさい!ルフィ!…で、これが?」
「あぁ、変な臭いもしなかったから毒はないと思ったんだけど…」

そう言ってチョッパーが差し出したのは、リルが見つけた赤い果実だった。
それを食べたことが原因なら、見つけた自分の責任ではないのか。

自責の念にかられていると、実を受け取ったナミは、繁々と見つめてから深いため息をついた。

「どう思う?」
「どうって、絶対これのせいだろ!どうすんだよ!?」
「そうね、原因が分かっても、元に戻す方法が分かんないとねー」

段々と面倒臭そうな表情になってきたナミとは対照的に、ウソップは一人パニックになっている。
そんな風に船上の誰もが困り果てているというのに、ゾロだけ甲板で眠りこけている様は何ともミスマッチだった。

「おれが、その実の成分を調べてみるよ!何か分かるかもしれない!」
「その必要はなさそうよ」

チョッパーがやる気満々になっていると、部屋の中からロビンが姿を見せた。
その手には分厚い本が握られていて、不思議そうな一同の前でとあるページを開いた。

「ほら、ここ見て」
「なになに?カジーヨ?」
「偉大なる航路の一部で生息しているみたいね。食べるとたちまち若返ってしまうとか」
「いや、若返るって…若返りすぎじゃね?」

ロビンが指差した部分を皆で覗き込むと、ウソップが呆れた様に突っ込んだ。
確かにリルよりも小さくなってしまった姿は、若返るというには度が過ぎている。

そんなサンジを膝に乗せていたリルには本の中身はよく見えなかったが、効果は半日くらいだって!というチョッパーの歓喜の声を聞いてホッと胸を撫で下ろした。

「へぇ〜、不思議果物か〜。うめーのか?」
「ちょっと!やめなさい!」

説明の意味がよく分かってないらしいルフィが実に手を伸ばした。
文字通り長く伸びた手を、ナミが慌てて叩き落としたが、ルフィが不満を言う前にサンジが叫んだ。

「うわあああぁ!!」
「サンジ?どうしたんだ?」
「な、なんなんだ!お前!腕が…!なんで!」
「なに言ってんだ?サンジ」

今やよく見る光景に一人だけが驚いているようで、今まで大人しくしていたサンジは堰を切ったように騒ぎたてた。

「なんでおれの名前を知ってるんだ!おれを誘拐してどうするつもりだ!」
「はぁ?誘拐?」
「どうやら記憶も退行しているようね」
「それは面倒ね」
「び、美人だからって騙されないからな!」

腕の中で暴れるサンジは仲間のことが分からず脅えているようだが、ナミとロビンに左右から覗き込まれて一瞬怯んでいた。
サンジは先ほどから悪態はつくが激しく暴れたりはしない。
それこそ細腕のリルが抑えられるほどで、女性にだけ優しいのは子供の頃からのようだ。

そう思って安心していたら、サンジはスルリとリルの腕を抜け出し船べりへと走り出した。

「っ…!」
「どこ行くんだ!サンジ!」
「私に任せて」

思わぬ素早さにリルが慌てていると、ロビンが甲板に腕を咲かせてくれた。
その手は見事に細い足首をとらえて、勢い余ったサンジは甲板に顔面を強打した。

「えっ?え?」
「あらあら、ごめんなさい?」

何が起こったのか分からず困惑しているサンジをよそに、ロビンは笑顔でサンジの下着に手を伸ばした。
どうやら転倒した拍子に脱げてしまったらしい。
小振りなお尻が顔を覗かせ、慌ててサンジが下着をたくし上げると、甲板から生えた腕がはらりと消えた。

「うわあっ!?」

その不思議な光景にサンジが驚いて尻餅をついていると、ナミがまたため息をついた。

「てゆーか、服はどこに置いてきたのよ」

そういえば、チョッパーの背中に乗せた時はズボンも靴も履いていたのに、船に着く頃にはなくなっていた。
どこかで落としてきたのかもしれない。

大きなシャツとブカブカの下着もサイズが合っておらず、半日だけとはいえ不便だろう。
しかし、誰もそんな小さな服を持っていないし…と困っていると、ルフィが首を伸ばした。
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