17

 教室に入って菖蒲の元に向かうと、菖蒲は携帯を弄っていたのを中断し、夏希に問いかけた。


「夏希、さっき朝比奈と帰って来なかった?」
「ん、丁度自販機で一緒になってね。帰るタイミングが重なったから一緒に帰ってきただけだよ」
「へえ……そう」


 含み笑いを浮かべる菖蒲には気付かず、夏希は鞄からお弁当を取り出した。


「菖蒲、早く食べよう」
「そうね。って、夏希を待ってたのよ」
「うん、知ってる」
「……もう」


 お腹が空いていたから早く食べたい。菖蒲は急かしてくる夏希に溜息を吐いて、自分の弁当を取り出した。

 弁当を食べながら、夏希と菖蒲は午後の部の話をしていた。


「午後の部って何があるっけ?」
「最初は部活動対抗リレーね。その後は部活動アピールタイムがあるわ」
「それは知ってる。アピールには私も出なくちゃいけないんだよね……めんどくさい」
「私もよ」
「浴衣って暑いんだよね……大体何で今頃部活のアピールなんてすんの?」
「今からでも良いから誰かに入ってほしいんじゃない? 二ヶ月しか経ってないから、今から入っても追いつけるだろうし」


 菖蒲はプログラム表を取り出して、ソレを見ながら言った。夏希も弁当を食べながらそのプログラム表を覗き込んだ。

 部活動対抗リレーと部活動アピールタイムの他に、あと四つくらいは競技がある。


「そういうもんなの? 後は綱引きと障害物競走に三年生の学年種目の大縄跳び、騎馬戦か……」
「その後閉会式して、椅子片付けて終わりみたいね」
「……早く終わんないかな」
「もう少しじゃない」
「そうだけどさ……」


 夏希はもごもごと呟きながら弁当を食べ終える。菖蒲も弁当を食べ終え、暫し話してから余裕を持って外に出た。

 午後の部の最初は部活動対抗リレー。食べ終わった後なのに結構キツい競技が来るなあ、と夏希はリレーの次のアピールの準備をしながら思っていた。

 持ってきた浴衣を体操着の上から羽織り、帯ではなく紐で結ぶ。とりあえず簡潔で良いと言われているし、そんなに時間もないのでちゃんとは着ない。

 裾を引きずらないように長さを気をつけながら、紐で縛った。


「ん、こんなものかな……それにしても暑い……」
「夏希、準備出来た?」
「出来たー」
「じゃあもう行こう! 皆並んじゃってるよ!」
「うわ……っ」


 同じ茶道部に所属している友人に引っ張られ、夏希は転びそうになりながら、他の友人が並んでいる所に行く。何だか今日は、引っ張られて転びそうになることが多い。

 並ぶ場所からは今やっているリレーを見ることが出来たので、アピールタイムが始まるまで見ることにした。

 今は文化部同士のリレーだ。しかも女子。さすがに文化部と運動部を一緒に走らせるようなことはしない。

 部活動対抗リレーなので、バトンはその部活動に関係あるものになっている。文化部で一番目立つのはここでもやはり吹奏楽部だ。楽器を持って走るのはキツいと思う。そのため、順位はそんなに良くない。

 一応茶道部もリレーに出ているには出ているのだが、彼女達は柄杓をバトンにしていて、浴衣で走っている。速い子も居るが、浴衣で走っているので順位は望めなかった。

 その後、文化部男子のリレーも終わって、ついに盛り上がる運動部のリレーとなった。

 こちらも最初は女子からだ。走る人を見てみると、同じ順番、アンカーに妃芽と由貴が居る。親友同士の戦いらしい。

 しかし妃芽は陸上部で、由貴はバレー部。どちらとも運動神経は良いが、陸上部は走るためのような部活だ。リレーに関してもプロに近い。

 最初は割りと良い感じの勝負なのだが、何回かバトンを渡すうちに陸上部は他の部活を引き離していった。バトン自体がバトンそのものだというのも、勝ってる理由のうちの一つだろう。

 女子のリレーは陸上部が勝って終わり、次は男子。
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -