セネルたちといっしょ!


「セネにぃ!
こぶしって、どうやったらおはなしするの?」
「………は?」



特に依頼もなく、シャーリィ、クロエ、ノーマ、ウィル、ジェイと談笑していたセネルは部屋に入ってくるなり、いきなりルークに「拳はどうやったら話すの?」と聞かれ、目を瞬かせた。



「あのねっ!
トレトレとヴェーにぃがね『男は拳で語り合うものだ。
いいか?ルーク。
それが出来ないと、いざという時に困るんだってことを忘れるな。
男なら拳で語り合えるようになっていた方がいい。』って、いってたんだ!!」
「…拳で戦いたいってことか…?」
「たたかうんじゃなくて、おしゃべりするんだよ!
こぶしどーしは、かたりあうんだよっ!
セネにぃ、こぶしでたたかうのに、しらなかったの?」



こてんと首を傾げるルークに、シャーリィは「可愛い…。」と呟き、クロエも賛同するように頷いた。



「ルーク、拳は喋りませんよ。」



どうやったら、拳は話すのか?とセネルに向かって期待のまなざしを向けるルーク。
何と答えたらいいのか分からないセネルは「うぅ…、どうしたらいいんだ…?」と困惑し、見かねたジェイが口を開いた。



「おはなし、しないの?」
「ヴェイグさんとティトレイさんが言っていたのはモノの例えで、拳自身が話すわけではないんですよ。」
「おしゃべり…できないの…?」
「え、…それは…、その…。」



拳は話せないと言われたルークは悲しそうに表情を歪め、瞳を潤ませた。
今にも泣きそうなルークにジェイは言葉につまった。

ここでルークを泣かせるようなことになれば、アッシュを筆頭に他のメンバーから何をされるか分からない。



「…ルーク、前に俺が渡した図鑑は見たか?」



今にも泣きそうなルークに戸惑うジェイ。
今度はそれを見かねたウィルが助け船をだした。



「うんっ!
みたよっ!」



ウィルの言葉にルークはパアッと顔を輝かせて、ウィルを見た。
さきほどまで泣きそうな表情を浮かべていたとは思えないくらいに顔を輝かせるルークにジェイは小さく息をはいた。



「あのねっ!
ワンちゃん、のってた!」
「犬…?
そんなはずは…。」
「レイナード、ファブレに動物図鑑でも渡したのか?」
「いや…。
俺が渡したのは魔物図鑑だ。」
「ウィルっちー。
ごほんにのってたワンちゃん、かいたい!!」
「ウィルさんは、ルークにウィルっちって呼ばれてるんですね…。」
「間違いなくノーマの影響だな。」
「うん…。」
「なんでそんなに呆れてんのよ!!
ウィルっちはウィルっちでしょ!!」



呆れた様子のセネルとシャーリィにノーマはぷりぶりと怒った。



「ウィルっちー。
ワンちゃんー。」
「ワンちゃんってのは…、どれのことだ…?」
「うんとね、ウィルっちのね、ごほんをもってきたのっ!」



そう言いながらルークはセネルたちの前にドン、と本を置いた。



「分厚ッ!」
「いや、その前にその図鑑、どこに閉まってて、どこから出したんだ!?」
「一体、ファブレのどこにそんな四次元空間があったというんだ!?」
「さすがは、王族だね…☆」
「それはあまり関係ない気がしますが…。」
「ウィルっち〜!!
これ〜!このワンちゃんほしいっ!」



突っ込みどころ満載のルークの行動に気を取られているうちに、ルークは“ワンちゃん”が載っているページを開いたようで、指を差して…にぱーっと笑った。
ルークが指差す方を見たセネルたちは固まった。



「…これ…、犬に見えるか…?」
「…私は…見えない、かな…。」
「…あたしも…、さすがに見えないな…。」
「同感です…。」
「ルーク。
これは、ワンちゃんなんかじゃない。」
「ワンちゃんじゃないの?」
「…いいか、ルーク。
これは…、ライガクイーンって言う魔物で断じて犬じゃない。」
「このワンちゃん、かえないの?」
「やめてくれ、ルーク!
ライガクイーンなんか飼ったらルークがエサになる!
頼むから、飼いたいなんて言わないでくれ!」
「そうだよ、ルーク!
危ないからやめた方がいいよ!」
「…………素晴らしい…。」



必死になってセネルたちは飼えないから諦めろと説得した。
…しかし、ただ1人だけ…プルプルと体を震わせている人物がいた。



「ウィルっち…?」
「ルーク!!
お前は本当に素晴らしい!
数ある魔物の中でも、ライガクイーンを選ぶとは…!
目の付け所が素晴らしい!本当に素晴らしい!!」



うぉおおーっ!と声を張り上げ、興奮するウィルにセネルたちは大きくため息をついた。



「でも…、このワンちゃん、かえないって…。」
「確かに人間がライガクイーンを飼うというのは難しい。
だが、ライガクイーンには他の魔物より子供に対する愛情が深いと言われている!
素晴らしいとは思わないか、ルーク!?」
「このワンちゃん、スゴいの?」
「当たり前だ!!
いいか、ライガクイーンはな…!」

「あ〜あ…。
スイッチ、入っちゃったよ…。」
「ルークも、興味津々みたいだし…、これはしばらく熱がおさまらないな…。」
「…まあ、レイナードが楽しそうだし、とりあえずは見守ろう。」
「さすがの僕もウィルさんに話しかけて学者の暑苦しい話を聞くなんて、ごめんです。」
「…ルークも、素直だから真剣に聞いてるしな…。」



――――…結局、ウィルの暑苦しい話は3時間にも及んだという。


…余談だが、このあと、ルークはアッシュに「アシュにぃ!ライガクイーンっていうワンちゃんをきをつけてかうから、かってもいい?」と交渉し、アッシュは飲んでいたコーヒーを吹き出し…、目の前にいたリオンは吹き出されたコーヒーをマトモに浴び…、大騒動になったという…。





※※※


…あれ?
拳の話からライガクイーンの話に変わっちゃったよ…。


でも、熱くなるウィルさん、書いてて楽しかったです。


ルークはライガクイーンのことで頭がいっぱいで拳の云々の話は頭の中からすっかり消えております(笑)



閲覧、ありがとうございました♪

[*←前] | [次→#]







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -