シングたちといっしょ!





「シング〜!」
「ルーク!
どうしたの?アッシュは?」
「アシュにぃ、おしごとなんだっ!
おれ、あそびにきたの!」
「ルーク、いらっしゃい!」
「俺たちの部屋に来るなんて珍しいな?」
「コハねぇ!ヒシュにぃ!」



アッシュは依頼を受けて、バンエルティア号にいないからシングたちのところに遊びに来たルーク。
どうやら、ロックスやクレアに頼まれていた仕事は終わらせたらしい。



「シングー!
あそぼーよっ!」
「いいよ!それで何して遊ぶ?」
「…なあ。」
「「…?」」



仕事を終え、遊びたくてうずうずしているのか、シングの服の裾を引っ張るルークと一緒に遊ぶ気満々なシング。
しかし、それを見ていたヒスイは気になったことがあって2人に声をかけた。
ヒスイに声をかけられ、同じように首を傾げるシングとルークに向かってヒスイは口を開いた。



「俺とコハクはヒス兄、コハ姉で、なんでシングは呼び捨てなんだ?」
「ああ、それは俺がそうしてくれって頼んだからだよ。
俺はルークのことを友達だと思ってるからさ!!」
「シングと、おれは、ともだち?」
「そう!友達さっ!」
「えへへっ。
うれしーっ!」



シングの言葉に嬉しそうに笑うルーク。
年の差があるのに、躊躇いもなく友達と言うシングに“シングらしいな”とヒスイは思ったが、あえて触れずに「へぇ〜。」とだけ返した。



「ねえ、ルーク!
私もルークと友達だよね?
だから、私も呼び捨てで呼んで!」
「コハねぇとも、ともだち?」
「うん!
ほら、私とルークって過保護なお兄ちゃんがいるから気が合うと思うよ!」
「コハク!!
どういう意味だ!?」
「そのままの意味だよ。
お兄ちゃんは過保護すぎ。
私はそんなに子供じゃない。」
「兄ちゃんはな、コハクのことを思ってだな!」
「あ〜…もうっ!
それが過保護だって言ってるの!」
「兄ちゃんはコハクのためを思って言ってんだべ!
兄ちゃんの気持ちも考えないその言い種はなんだっぺや!?」
「オラはもう子供じゃないってさっきから言ってるだ!
過保護にされなくても自分で考えて行動できるべさ!」
「なして、兄ちゃんの気持ちを理解できないっぺ!?」
「それはこっちのセリフだべ!」
「コハクもヒスイも落ち着いて!」
「「落ち着いていられるはずがないっぺよ!!」」
「いや、でも…。」
「オラはずっと我慢してた。
だども、もう我慢の限界だべ!」
「兄ちゃんはコハクに我慢させるようなことは何もしてないべ!」
「よく言うだ!
そんな言葉が出ること自体が、オラの気持ちを理解してない証拠だ!」
「コハクのことは兄ちゃんが一番よく分かってるだ!」
「ウソつくでねえ!」
「コハク!!ヒスイ!!
ルークがいること、忘れてるだろ!?」
「「Σ…あ…!」」



言い合いをするヒスイとコハクは途中から口調が変わっていた。
気を抜くとついつい故郷の言葉に変わってしまう2人はシングに止められ、ようやく言い争いをやめてルークを見た。

ルークは、ぽかんとした表情を浮かべてヒスイとコハクを見ていた。
ルークが何を思って見てるのかが分からないヒスイとコハクはルークが言葉を発するのを待った。



「…………。」
「…ルーク…?
あ、その…わ、悪かったな!」
「遊びに来てくれたのに無視してごめんね、ルーク。」



言葉を発するのを待ったものの、ルークはぽかんとした表情を浮かべたまま固まって動かず、ヒスイとコハクは沈黙に耐えられず謝罪した。



「…ヒシュにぃ…、コハクゥ…。」
「な、なんだ?」
「ど、どうしたの?」



無視されたことにショックを受けて泣き出してしまうのではないかとハラハラするヒスイとコハク。
もし、ルークを泣かせるようなことをすれば、過保護な兄…アッシュから手痛いお返しがくるのは容易に想像がつく。

それでなくとも、ルークは他のメンバーに可愛がられているため、泣かせてしまえばアッシュだけでなく、他のメンバーにまで何をされるか分からない。



内心はだらだらと冷や汗を流すヒスイとコハクは次にルークが発した言葉を聞いて固まった。



「いまの、はなしかた、おもしろかったよ!
おれにも、おしえてっ!!」



キラキラと瞳を輝かせながらルークは2人に話し方を教えてほしいと言った。



「えー…っと…?」
「あの沈黙は…泣きそうだったからじゃなかったってことか?」
「あはは。
そうみたいだね。
教えてあげたらいいんじゃないかな?」
「うんっ!
おしえてっ!」



楽しそうにピョンピョン跳ねながら、期待の眼差しを向けるルークを見てヒスイとコハクは苦笑した。



「で?
なにを言いたいんだ?」
「んーとねー、アシュにぃがよくいうのがいい!」
「アッシュはよく何て言うの?」
「んーとねー…、『俺を誰だと思ってる!?』とかー、『雑魚が近寄んじゃねぇ!』とかー、『砕け散れ!!』とかー…」
「…わかった!わかったから、それ以上は言わなくていい!」



どんな言葉を真似したいのか聞けば、アッシュのよく言う言葉を真似したいと言うルーク。
しかし、ルークの口から出るのは幼い子供が言うにはあまりにも乱暴なものばかりで思わずヒスイは途中で止めた。



「ヒシュにぃ?」
「とりあえず…『俺を誰だと思ってる!?』は『オラを誰だと思ってるだ!?』、『雑魚が近寄んじゃねぇ!』は『雑魚が近寄んじゃねぇだ!』、『砕け散れ!!』は『砕け散っぺ!!』だな。」
「んーと、おらをだれだとおもってだ?」
「め、めんこい…じゃなくて、可愛い…!」



ことりと首を傾げながら真似をするルークにコハクは頬を赤らめながら悶えていた。



「じゃこがちかよんじゃねぇだ!」
「じゃこ、じゃなくて雑魚だ。」
「じゃこ?」
「ざ・こ。
じゃこだとまた違うものになんだろ?」
「じゃこー…。じゃ…じゅ…。
うぅ〜…。」
「まァ、それはそれでいいかもしれねーけどな?」
「うんっ!」



ヒスイにわしわしと頭を撫でられ、ルークはにぱっと笑った。



「シング〜!
じゃこがちかよんじゃねぇだ!」
「あはは!
俺はじゃこじゃないじゃないよ。」
「じゃこ〜!!」



ルークはそのあと、シングと楽しく遊んだあと、依頼を終えて帰ってきたアッシュを迎えに行った。



「アシュにぃ!」
「今、帰ったぞルーク。」
「アシュにぃ、くだけちっぺ!
じゃこがちかよんじゃねぇだ!
オラを、だれだとおもってだ!!」
「な…ッ!?」
「アシュにぃ、じゃこ〜!!」
「お前…、俺のことをじゃこだと思ってたのか…。」



ヒスイから教えてもらった言葉を使うルークにアッシュは強いショックを受けて部屋にこもってしまったらしい…。



「ヒスイ、コハク。
小さい子供の前では言葉遣いに注意した方がいいよね…。」
「うん…、そうだね…。」
「確かに悪気はなくても、あんなに躊躇いもなく言われたらけっこう傷付くよな…。」



ショックを受けるアッシュの姿があまりにも惨めで、シングたちはルークの前では言葉遣いに気を付けようと強く思ったのだった…。



※※※


今度はハーツ編でございます。

ヒスイとコハクの話し方は恐らく間違ってると思いますが気にしないでください…。


だって、田舎系の正しい言葉遣いが分からないんだもの!!


でも、楽しかったです(笑)

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