鳴門 | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -
96.


「黒ゼツ、いつまでオビトにへばりついてるつもりだ? あまりにも遅いのでこちらから出向いてやったわ」

九尾を抜かれ瀕死のナルトを目の当たりにしても、ナルトへ移そうとした四代目の九尾を黒ゼツに奪われても、あくまで冷静に戦況を窺うなまえは一体何に備えているのか。問いかけようとした俺の声は上空から地面を抉るほどの勢いで落ちてきたマダラによって遮られてしまった。

「スミマセン……デスガ、コイツラカラ九尾ノ半身モ奪ッテオキマシタ」
「よし、左目と合わせて持ってこい」
「マダラ、どうやって六道の力を……」
「マダラ様ガイル限リ、コイツカラ離レテモオ前ラハ何モ出来ナイ」

まるで俺たちを嘲笑うかのように黒ゼツが緩慢な動きでオビトから離れようとした瞬間、満を持して印を組んだなまえの体から伸びたチャクラ糸がオビトの背中を捕えると、ピタリと黒ゼツの動きまでもが止まった。

「トビさん、早く起きてください! このまま黒ゼツの好きにさせるつもりですか!?」

間接的に黒ゼツのチャクラを縛っているからか、それともなまえの声が届いたのか。離れかかっていた黒ゼツが再びオビトの元へと戻り、右の目蓋がゆっくりと持ち上がった。

「まだだ……マダラ、あんたにとって俺は何だ?」
「ククッ……今さらくだらないことを聞くな。お前は俺にとってマダラ以外の何者でもない。この世界を否定し、その思想の下、無限月読の計画を狙う存在は全てマダラだ」
「……それは、俺の道でもあった」
「それは俺が示してやった道だ。お前は目的達成のためにマダラとして天寿を全うし、この世界の救世主となるはずだった……だが、六道仙人が示したこの世界は失敗した」

マダラ曰く、六道仙人が広めたチャクラとは本来ならば繋ぐ力のこと。人同士の精神エネルギーを繋ぐものであり、言葉を交わさなくてもお互いの心を理解し合い、安定を願うもの。けれど、俺たちはいつしか自身の精神エネルギーと身体エネルギーを繋ぎ、武力として利用するようになってしまった。

「俺もお前たちも平和とともに争いを求め、チャクラと言う力によって無限の苦しみを強いられてきた。力があるから争いを望み、力がないから全てを失うのだ。だからこそ俺はそれらを乗り越え、忌まわしきチャクラなき夢の世界を造るのだ! 思い出せ、オビトよ。お前もまやかしの力によって全てを失い、ここが地獄であることを実感したはずだ!」
「……すまない。なまえ」
「トビさん……っ、」

やはり万全の状態ではないからなのか、オビトが一歩、二歩と進むごとになまえのチャクラ糸が引き千切られていく。そして周りの妨害も空しくマダラの前までたどり着いたかと思うと、俺たちが思い浮かべた最悪の展開とは裏腹にオビトの右腕がマダラの体へと沈み込んだ。

「貴様、一体何の真似だ!?」
「人を導く者は己の死体をまたがれることはあっても、仲間の死体をまたいだりはしないらしい」
「なら、それを確かめるためにまずはお前が死体にならねばな」
「俺はもうあんたにまたがれることはない。己の名を騙らせ、他人に全てを任せることは仲間に託すこととは違うと今なら分かる。俺はあんたじゃない……今の俺は火影を語りたかったうちはオビトだ!」

六道の力の一部がオビトへ渡ったと同時に、マダラの中から尾獣の欠片が引き抜かれた。

「カカシ、ナルトを時空間へ運べ!」
「ゲンマ! トビさんを援護する。力を貸して」

俺が応えると同時になまえが飛雷神の術でオビトの傍まで飛んだ。
二人目がけて猛スピードで向かっていく求道玉はおそらく時空間忍術では間に合わない。なまえも同じように判断したからこそ俺に協力を仰いだのだろう。繋ぎの力による移動の感覚なら本部から飛んだ時に大体掴んでおり、あの時のお互いの立場を逆転させれば良い。なまえの手がオビトに触れ糸結びの術、とお互いの声が重なった次の瞬間、俺のすぐ横でドサリと二人が落ちる音が聞こえた。

「二人とも無事か?」
「ゲンマか。なぜ、お前が繋ぎの力を……いや、今聞くべきことじゃないな」
「オビト! ナルトは運んだ。後はお前が向こうへ飛べば、ナルトは助かるってことだな?」
「ああ、任せろ。カカシ、今回は俺がメインでお前はバックアップだ」
「久方ぶりのツーマンセルだな。しくじるなよ、オビト」

prevnovel topnext